米中が手を組みウクライナ停戦?バイデンが水面下で進める仰天シナリオ

 

かなり字数を費やしてしまいましたので、簡単な仮説の提示にとどめたいと思います。全くの仮説ということを念頭に入れつつ、皆さまの議論のたたき台にしていただければと思います。

1)米国の動き、具体的にはASEANとQUADによる対中圧力、また関税廃止の検討、下院での「枢軸法案」可決などは総合的に、「習近平政権の幕引き」へと「やんわりと誘導する」のが狙いか。

2)もしかしたら、米国は既に李首相派との間で、密約が進行している可能性も。具体的には、関税解除、物流の正常化(これは既に李総理が国策として発表済み)、などで中国との国際分業を完全復活させて、米国における物価鎮静化を狙う内容。更に「共同富裕政策」は先送りさせて、全体的な成長路線に回帰させる。これは十分に可能性はあるが、米国としては相手が習近平では難しい。

3)今回のバイデン訪日の本当の目的は、この点にあり、QUADもこのシナリオで動く可能性がある。

4)更に、バイデンは中国の李首相の影響力を使って、ウクライナ停戦を工作するかもしれない。仮に、ウクライナの戦火が止まれば、国際的な石油価格は下降し、バイデンが苦しんでいるインフレは好転する可能性あり。

5)問題はウクライナの停戦条件。まずフィンランドとスウェーデンのNATO加盟は取り下げ、つまり性急な加入表明は「取り下げをプーチン向けのカード」として切るための工作という側面がありそう。プーチンが激怒しなかったのは見抜かれていたからか。但し、中国が仲介する場合は「プーチンへの戦犯訴追は無し、賠償もなし」というロシアに大甘の条件プラス「ウクライナ復興は中国が金を出す」という条件になる可能性。さて、そうなった場合にバイデンは呑めるかという問題が…バイデンは恐らく乗るのではないか?

6)では、その中国では李総理が総書記に昇任するのか(という説が流れていますが)というと、これは可能性は低いと思われる。理由は2つ、まず仮に「ウィズコロナ」に思い切り振った場合に、中国の巨大人口は免疫がないのでオミクロンの猛威で大変な被害が出る。李総理はそこで「ウィズコロナと心中して自分も退陣」となる可能性がある。もう1つは、李総理(66歳)は今秋の党大会では68の定年に達していないので、1期5年は常務委員になれるが1期しかできないので、本格政権にはならない。従ってポスト習近平には不適当。

7)では、ポスト習近平の本命はというと、やはり第6世代のホープで、現在は序列が下げられているものの、統治能力ということで胡春華か。

8)仮にここまでの流れができて、中国は「ウィズコロナ」になり、ロシア=ウクライナ戦争は停戦、米国の物価高は鎮静化、ということでバイデンの工作が見事に当たったとして、中間選挙には間に合わない。また全て上手く行っても、バイデンの功績という見方は出そうにない。中間選挙は共和党の「アンチトランプ」が勝利、という可能性。

というのが、私の現時点での「見立て」です。全くの状況証拠を並べただけで、決定的なストーリーではありませんが、この仮説を修正しながら以降の事態を見ていきたいと思います。皆さまのご議論をお待ちしています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2022年5月17日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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