セクハラを“古い価値観”で済ます無神経。思考停止が新たな被害者を生む

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さまざまなハラスメントに対して、「昔ならこれくらいのことは問題にならなかった」との思いを抱いている方がいるとしたら、その姿勢こそがハラスメント連鎖の空気を醸成している可能性が高いと言えるかもしれません。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では著者で健康社会学者の河合薫さんが、教師から子供たちへのセクハラを報じるニュースを取り上げ、調査にあたった教育委員会担当者の「昔の価値観は通用しない」との見解に違和感を抱いた理由を詳説。その上で、ハラスメント防止のために徹底させるべき作業について考察しています。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

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セクハラ問題を「古い価値観」で終わらせないで

静岡県教育委員会が、小学5年から高校3年までの計15万6,306人を対象に実施した「セクハラ実態調査」で、「セクハラを受けたと感じた」との回答が97件あったことがわかりました。

調査は生徒たちにセクハラの意味などを説明した上で、家庭で回答を記入してらもい、直接校長らが回収しました。97件のうち、強制わいせつに該当するなど懲戒処分の対象になる事例はなかった一方、「不必要な身体的な接触」と「不必要な接近・凝視」が全体の約7割を占めたそうです。

具体的には、

「ほめられた時、頭をなでられた」
「部活の指導中に腕を触られた」
「体育館で整列していた時、40秒ぐらい肩に手を置かれた」
「あいさつをした時、胸を見られた気がした」

などで、県教委の担当者は「古い価値観はもはや通用しない」との見解を示した
とされています。

さて、いかがでしょうか。「頭なでるのダメ、指導するのに腕さわるのもダメ、ダメダメだらけ。何もできないじゃん!」と思った人は、多いかもしれませんね。

奇しくも、担当者はそれを「古い価値観」という言葉で表現したわけです。

でも、これって本当に“古い価値観”と言ってしまっていいのでしょうか?“古い価値観“という言葉を使うことによって、思考停止に陥っていないでしょうか。

2013年に、厚労省がセクハラ対策を強化するとして、男女雇用機会均等法の指針や施行規則を見直しを進めたときも、“古い価値観”という言葉が飛び交いました。

―「男のくせに」「結婚まだなの」同性間セクハラも禁止―という見出しが大手新聞社の一面にデカデカと掲載され、テレビの画面には「何も言えないね」と失笑する人や「女子社員とコミュニケーションとれないじゃん」と呆れた顔をする人、「子供は?も聞いちゃダメってこと?」と戸惑う人たちが映し出されたと記憶しています。

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