あの「悪夢の紛争」が再燃か?ウクライナ戦争の裏側で燻る新たな火種

 

ここまでの見解を覆すようなことがあるとすれば、それはプーチン大統領とロシア政府・ロシア軍が【国家安全保障に対する脅威が与えられた】と考えるような事態が起きるときで、それはもしかしたらプーチン大統領による対ウクライナ(とその周辺国に対する)戦術核兵器の使用という想像したくない事態を招く可能性は否めません。

もちろん“核使用”があった場合、ロシアが無傷で済むようなことはないですが、その際にカギを握る要素が【いかにロシアによる蛮行に全面的に反対する国々が一致団結して、迅速に行動を取ることが出来るか】です。

ロシアによる核使用が、イコール【核使用を含む対ロ報復】を呼び起こすのであれば究極的には世界の破滅へとつながることになりますが、そこまで極端に行かなくても、迅速かつ一枚岩でロシアを国際的に(社会的に)抹殺するようなことができるのであれば、この戦争に勝敗が見えてくるのかもしれません。

しかし、これがいかに難しく、恐らく不可能であるかは、すでにこの6か月の状況を見てお分かりになるかと思います。

その最大の理由は【世界の3極化】が固定したことです。

2014年のロシアによるクリミア半島併合以降、欧米各国とロシアとの間に亀裂が生じ、そこに反プーチンのロシア人たちがロンドンやドイツで暗殺されたり、暗殺されかけたりしたことで、より欧米各国からロシアへの風当たりが強くなったのはご承知の通りです。

その間にアメリカではトランプ政権が誕生し、プーチン大統領との微妙な関係が反映された米ロ関係が存在するのと並行して、米中間の対立と緊張が一気に高まりました。その影響は今なお続き、強化されています。

そしてトルコですが、経済的なスランプを経て、独特の地政学的な利点を生かし、NATOの一員としての立場と、ロシアにも近いという独特の立場を巧妙に使い分けてデリケートなバランスを維持して、国際情勢におけるトルコの立ち位置を確保したように思います。

  • 欧米社会とその仲間たち
  • ロシアと中国に引っ張られる国家資本主義および“ソフト”な独裁チーム
  • トルコ・インドに代表される国益に応じて組む相手を変える“ニュートラル・パワー”

大きく分けて世界はこの3極に分かれてきました。それが鮮明化し、世界の分断を生むトリガーとなったのが、ロシアによるウクライナへの侵攻です。

欧米グループと中ロのグループの特徴については、何度かお話ししていますのであまり詳しくは触れませんが、前者が自由民主主義の社会で人権や経済的な事由が重んじられるグループで、その考えをユニバーサルなものと位置づけ、その理念に反する相手に対しては公然と非難し、制裁発動も辞さないという特徴があります。

後者については、表向きには人権問題や内政上の問題には口出しせず、ただ経済的なパートナーシップと外交的な相互支援を重んじる特徴があり、比較的マイルド・ソフトな独裁・専制政治のグループが属します。

では第3極と目されるニュートラル・パワーはどうでしょうか。欧米とも、中ロとも一定の距離を保ち、国益に応じてケースバイケースで組む相手を変える特徴が見られます。トルコ、インド、サウジアラビア、ブラジル、南アフリカなどが例として挙げられますが、特徴としては近年国力を伸ばし、誰かに依存する体制から脱した国々と言えます。

これらの第3極に属する国家群が、今、国際情勢の裏側において大きなcasting voteとしての立場を持っています。

例えば今回の“ウクライナでの戦争”に対しては、ロシアによる侵攻を非難しつつも、欧米諸国が提言する対ロシア制裁には加わらず、上手に欧米諸国群と中ログループと付き合い、しっかりと立ち位置と利益を確保しています。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

 

print
いま読まれてます

  • あの「悪夢の紛争」が再燃か?ウクライナ戦争の裏側で燻る新たな火種
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け