あの「悪夢の紛争」が再燃か?ウクライナ戦争の裏側で燻る新たな火種

 

ロシアによるウクライナ侵攻から、中国がどの程度、自国の台湾併合戦略に対する教訓を得ているかは見えてきませんが、かなり精密に研究・分析が進められ、何通りもの戦略・戦術が組まれているようで、それがまた日米とその仲間たち(G7)の警戒レベルを上げさせるというエスカレーション傾向に火をつけています。

  • ロシアとウクライナの戦争
  • 台湾をめぐる米中対立の激化

といった国際案件の裏側で、他の火種がまた燻っています。

そのどれもが「欧米諸国とその仲間たち」と「中ログループ」の双方が、現在、ウクライナでの戦争にリソースを割かれているから起きていると思われますが、その一つが、私も深く関わってきた【コソボ問題】です。

火種となったのは、2008年にコソボ(アルバニア系)がセルビア共和国からの独立を宣言し、コソボ共和国となったことですが、その際に独立を支援したのが欧米諸国で、独立に強く反対したのがロシアと中国でした。

その際、中国とロシアの反対理由は、自国内の少数民族グループへの独立機運の高まりを警戒したという背景がありますが、欧米諸国側としては、自らが掲げる人権などの民主主義的な価値観をアピールし、暗に中ロの閉鎖的な姿勢を非難するための道具に使いたかったという背景もありました。そのために、EUはコソボ共和国の通貨をユーロにし、EUのIT産業を多くコソボに移転するという離れ業まで繰り出しました。

言い換えると、「どちらがよりたくさん仲間を集め、勢力圏を拡大できるか」という、両陣営による世界における陣営拡大戦の道具に使われてしまいました。

一応、多数からの支持を得てコソボ共和国は独立した形になっていますが、コソボ政府がこのところ、国内の少数派であるセルビア系住民に対して「セルビアのIDと車両のナンバープレートの使用を禁止する」と宣言したことで、コソボ共和国北部のセルビア系とその他のアルバニア系のコミュニティ間で衝突が起き、あの悪夢の紛争が再燃しかねないと懸念されるほど、緊張が高まっているようです。

実はこのコソボでの問題は、ウクライナでの戦争における欧米諸国と中ロの代理戦争・場外乱闘とも言われているのですが、その最大の理由は、平和維持の目的で約4,000人のNATO軍が今もコソボに駐留しており、万が一の場合、このNATO軍の規模を拡大して、紛争の再燃を防がなくてはならないという現実が、NATOの対ウクライナ戦略に影響を与えることになると懸念されていることです。

ゆえに早期に緊張緩和のための仲介努力をスタートさせようとしていますが、すでにEUによる仲介は物別れに終わっており、その結果、紛争調停・予防外交のリクエストが入ってきたのですが、検討段階ですでに欧米側とロシア側双方からの圧力がかかってきて非常に困難な状況になっています。まさにウクライナでの対立が、こんなところにも降ってきました。どのように対応すべきか苦慮しているのですが、なぜかここにもトルコの友人が…。

現在進行形のコソボ問題については、あまり詳しくは書けないのですが、マルチフロントでの調停案件に直面することになるでしょう。

ウクライナでの戦争の背後で、ここで触れたコソボ問題に加え、今も悲惨な状況が続き、残念ながら国際社会からも見放された感が否めないロヒンギャ問題、エチオピア北部ティグレイ州で続く戦闘などが、国際協調の機運を根底から覆し、二度とは戻れないポイントを超えさせる火種になる可能性があります。

それに加え、コンゴ民主主義人民共和国では今年に入ってエボラウイルスの感染拡大が確認され、いまだ抑えきれないコロナのパンデミックと合わせ、悲劇の度合いを拡大させ、それがまた新たな紛争の火種となっています。コンゴのエボラについては、一部メディアで報じられていますが、確実に私たちが聞き逃し見逃してしまった事例の一つでしょう。

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