統一教会ズブズブ惨敗。玉城デニー氏圧勝という沖縄県民が出した回答

 

正面から問われた「辺野古建設」の是非

私が「日刊ゲンダイ」の連載コラム9月1日付(先週号所収のFLASH No.474参照)で指摘しておいたように、今回の知事選が4年前の前回と異なるのは、自民党が辺野古基地建設について口を濁すのを止めて、正面切って「容認」を訴える方針に転換したことにある。

その転換は実は7月の参院選ですでに始まっていて、オール沖縄の現職=伊波洋一に挑んだ自公の古謝玄太は「辺野古容認」を訴えたにもかかわらず、伊波の27万4,235票に対し27万1,347票と、わずか2,888票、率にして0.5%の差にまで肉薄した。これを見て茂木敏充自民党幹事長は「辺野古から逃げなくても、もう一押しで勝てる」と、この知事選に勝負を賭けた。

それに対して玉城は演説の中で、

「辺野古新基地建設は完成できない。普天間の危険性除去は部隊を県外・国外に移し、オスプレイやヘリが上空を飛ばない日常を取り戻す。玉城デニーは絶対にぶれない。再び、県知事としての役割を担わせてほしい」

と、普天間の県外・国外移転と辺野古の建設中止を強く訴えた。その挙句の圧勝であるから、この結果は何にもまして辺野古問題についての県民世論の決着を表したものと言えるだろう。茂木は賭けに敗れたのである。

しかし辺野古問題の先行きは多難

そうは言っても、茂木が大人しく引き下がるかと言えばそんなことはない。第2次安倍政権・菅政権を通じて政府・自民党が貫いてきたこの問題についての基本姿勢は、こと国防に関わって「国民主権」とか「県民世論」とかいうものが通用するはずがなく、政府の専権によって決定され執行されて然るべきであるとする戦前型の「国権主義」であって、岸田=茂木政権も基本的にそれを引き継いでいる。これを転覆するには、沖縄県民とその知事がいくら頑張っても限界があり、中央政界での力関係の変化が必要となる。

そのような中央にも及ぶ政治的条件を欠いたままの知事が辺野古建設反対の世論を託されても、正直なところ出来ることは限られていて、すでに翁長雄志前知事以来、行政的・法律的の範囲内で県がやりうることはほとんどやり尽くしている。県レベルでそれを超えていくものがあるとすれば、行政的・法律的な合理の範囲に収まらない、運動的・情念的な非合理のパワーで、それが本来「オール沖縄」に期待されたものであったのだが、オール沖縄はそのようなものとして育ってはいない。

それでも県知事が、東京を通さずに直接に米国政府と交渉を開き、辺野古中止のみならず在沖の全米軍基地の段階を追った返還を実現するという大田昌秀知事時代の自立的な発想を追い求めることは、少なくとも論理的には不可能ではないが、米バイデン政権が先頭を切って「台湾有事」論を扇動し、その場合に尖閣から先島、沖縄本島までが中国による軍事攻撃に曝されるといった虚妄が罷り通っている現状では、ほとんど不可能で、これを押し開けるには県が先頭を切って「台湾有事論」「中国脅威論」の横行と戦わなければならないが、玉城にその問題意識はない。

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