某大手建設会社の専務に聞いた話です。
「当社の新入社員は有名大学卒業者が多く、わたしが何度『提出書類は、完璧よりもスピード重視。60点の出来でもいいから、もっと早く提出しなさい』と言って聞かせても、完璧を目指してなかなか提出してこない。子供のころからの完璧主義はそれほどまでに根深く染みついていて、この癖は30代になるまで続くんですよ」
わたしは、名前さえ書けば受かる定時制の夜間の大学出身で、一流大学出身ではありませんが、「社会人になったら、役員になりたい!」と、燃えていました。そのため、新人時代は『与えられた仕事は、細部まで完璧に仕上げよう』と決めていたのです。
ある日、広報部から社内報に掲載する原稿の執筆と、写真を切り貼りする仕事を依頼されました。私は例によって完璧な仕事を目指し、1日がかりで作業していました。
すると、どうなったと思いますか?経理担当者の先輩から、「お前はそんな1円にもならない仕事にいったい何時間かけてるんだよ!お前がグズグスしているから、いつまでも他の仕事を頼めないじゃないか!」と怒鳴られたのです。
今なら先輩が言った言葉の意味がよくわかります。しかし、当時はショックでした。わたしにとっては、完璧こそすべてでした。褒められこそすれ、まさか怒られるとは思っていなかったのです。当然、怒られた理由もわかりませんでした。
こんな話もあります。イベントを企画したいと思った主催者が、有望な2人のフリーランスに連絡をとりました。一緒に企画、立案をしてほしいという依頼です。その時にどちらを選んだかというと、すぐに連絡をし、ざっくりとした企画書を提出した側だったそうです。企画書の質は、後から提出した書類のほうが完成度は高い。ですが、主催者はスピード重視で人を選んだのです。
仕事に燃えている社員やヤル気に満ち溢れているフリーランスに限って、完璧に仕上げようと努力してしまうもの。しかし、不必要な完璧を目指して時間をかけ過ぎるのは、ただの無駄です。さらに言えば、時間をかけて作ったものの方向性が間違っていて、やり直しになったらとんでもない時間のロスになってしまいます。完成度は途中の段階で報連相(報告、連絡、相談)をすることで、やり過ぎもやり間違いも防ぐことができます。かつ、チームですり合わせができるので効率的です。
仕事の成果とは「完成度×時間効率」です。どれだけ完璧に仕上げても、「仕事が遅い」「遅いから一緒に仕事をしたくない」と思われたらチャンスを逃してしまいます。
完璧じゃなくてもスピード重視。「手を抜く」ということも必要なのです。全てのビジネスパーソンに共通しているのは「スピードを制すものはビジネスを制す」。ぜひ時間への「意識改革」を起こして、波に乗っていきましょう。
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