プーチンに与えた「核使用」の正当性。ウクライナ軍によるロシア本土攻撃の結末

 

今回の攻撃に対して危機感を感じたのはアメリカ政府で、即座にアメリカによる関与を否定するだけでなく、国務長官・国防長官からほぼ同時に「アメリカはウクライナをはじめとする各国が持つ自衛の権利を認めるが、今回の攻撃に対し、アメリカは一切関与していない」「アメリカがこれまでウクライナに対して行ってきた武器供与を含む軍事支援はすべて防衛のためであり、今回使われたような長射程(long-range)の武器は一切供与していない」というコメントが出されるほど、アメリカ政府も今回のことには戸惑っていると思われます。

実際に、ここ最近、トルコやスイスの働きかけで米ロ高官の間でウクライナ問題の協議が続けられていましたが、今回のウクライナによるロシアへの越境攻撃は、米ロが話し合いのチャンスを模索している裏で、ウクライナが独自に戦闘・戦争をnext levelsに進めてしまったと、アメリカの政府内では不信感と危機感、懸念が高まったと言われています。

アメリカおよびNATOへの飛び火を警戒したというのが内容のようですが、同時に今回のウクライナによるロシアへの攻撃は、プーチン大統領が設定した“核使用のための条件”を満たしてしまう恐れを感じたようです。

では当のプーチン大統領およびロシア政府はどうでしょうか?

今回の攻撃に対して怒り狂っているとは思いますが、表面上は平静を保ちつつ、いくつかの決意に満ちたメッセージが込められているように思います。

それは【すでに始めている対ウクライナ冬の陣(攻撃のレベルアップ)は継続・強化し、徹底的にウクライナの様々なインフラと生活を破壊し、補給路を途絶させて物理的にも心理的にも、ウクライナを絶望の底に叩き落す】という作戦です。

ウクライナからの攻撃後すぐ、それまで一時停止していたウクライナへの作戦行動を大規模なミサイル攻撃という形で再開し、徹底的な破壊を行っています。

そしてその裏では今回の事件を受けて、ロシア国内ではプーチン大統領と政権への支持が回復し、同時に“自分ごと化”も進んできているとの情報も入ってきました。

今回の“自分ごと”化は、以前、予備役招集時起きたネガティブなものではなく、今回の戦争を自分事と感じ始めることで、自衛意識が高まり、同時に「ウクライナを叩くべし!ウクライナの危険に対応するプーチン大統領を支持する」という感情の高まりがみられるようです。

あくまでもプロパガンダ映像的な性格もあるかと思いますが、モスクワではスポーツクラブにおいて、市民が自動小銃による戦闘の訓練を受けている姿が続々と流されていますし、一時期、燃え上がりそうになってきていた対プーチン批判もどういうわけか下火になっているように見えます。

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