プーチンに与えた「核使用」の正当性。ウクライナ軍によるロシア本土攻撃の結末

 

これまでなら「そのような心理効果を狙った自作自演?」と考えることもできましたが、今回、ロシア国内の結構“奥”(ウクライナ国境から500キロほど)の基地への攻撃を受けたことは、様々な意味でロシアにショックを与えているようです。

そこには【これは、ウクライナによるロシアへの宣戦布告】という意見もあり(個人的にはどの口が言うんだ、という気持ちがありますが)、この意識が国内に溢れてくると、浮かんでは消える“あの”問題と懸念に触れなくてはならないでしょう。

それは「核戦争の危険性は高まったのか?」という問いですが、プーチン大統領はメディアからの質問に答える形で「核戦争の可能性は高まったと言える。ロシアは世界でも最先端の核兵器を有しているが、それは剃刀をもって走り回るような物騒なものではなく、あくまでも自国の防衛と戦争のエスカレーションの抑止の目的だ」と答えていますが、皆さんはこのメッセージをどのように受け取られるでしょうか?

私はこの回答を驚きと恐れをもって受け取りました。「先制攻撃には用いないし、むやみに使用もしないが、ロシアおよびロシア国民の安全保障および防衛のためには使用することも厭わない」というように解釈できるため、12月5日と6日に行われたウクライナ軍によると思われるロシア空軍基地と石油備蓄施設への攻撃は、プーチン大統領のレッドラインを踏み越えると同時に、プーチン大統領とロシアに核使用を正当化させる結果になるのではないかと恐れています。

それがどうなるかは、実際にはウクライナがどうするかというよりは、NATOの国々がどのように反応するかにかかっていると思われますが、それが分かっているのか、各国は非常に慎重な反応に留まっているように見受けられます。

ちなみに、余談ですが、開戦以来ロシアが用いてきたミサイルのうち、最近のインフラ施設および補給路の破壊に用いられているものは、核弾頭を搭載可能な高精度巡航ミサイルX55であり、これまでのところは核弾頭を外して使用されています。

それが本来の役割を果たすことがないように祈ります。

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image by: Salma Bashir Motiwala / Shutterstock.com

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