人工知能やドローン、ロボットが鍵。世界的エンジニア中島聡「今こそ日本政府“Society5.0”の新定義とビジョンを語ろう」

 

高齢者向けエンタメとしてバーチャル・ツーリズムが大ビジネスに

すでに中国では起こり始めていますが、街中にカメラが設置され、人々の行動が24時間モニターされるようになります。高精度カメラを搭載した人工衛星が数千の単位で飛ぶようになり、世界中で起こっていることを宇宙からリアルタイムで捉えることも可能になります。また、複数の自動運転ドローンが「移動式カメラ」として指定した場所を「3Dツイン」(時間軸も含めれば4D)として記録するようになります。

犯罪の防止や、犯罪者の追跡に使われるのはもちろん、徘徊老人・迷子・不法移民の追跡・把握にも使われるようになります。小売店は万引きをリアルタイムで認識できるようになり、警察への通報から、店から出た後の犯人の追跡までが全て自動化される時代が来ます。

街の掲示板やポスターが全て電子化され、通りがかった人向けの情報や広告が表示されるようになります。配偶者の誕生日が間近な人を認識すると、誕生日プレゼントの提案をしたり、スポーツイベントのチケットを持っている人に、道案内をしたりするようになります。

ARグラスが普及すれば、それぞれの人に最適化された広告や情報がさらに発信しやすくなります。離れたところにいる人と、散歩しながら会話するなどもごく普通の行動になります。エンターテイメントの幅も大きく広がり、ポケモンGOを次の次元にまで進化させた、仮想現実を現実空間に融合させたスタイルのゲームが普及することになります。渋谷のスクランブル交差点に突如現れたバーチャルな怪獣を人々が協力して退治する風景が日常的に見られるようになります。

リアルな小売店が、オンラインショップにビジネスを奪われたように、現実との融合を活用したARショッピング・ビジネスが台頭しはじめます。コーディネートされた洋服と装飾品を身にまとったモデルやインフルエンサーが街を歩き、それをARグラスで見た消費者がその場で衝動買いする時代が来るようになります。さらに、一般の人が自分自身が広告塔となって歩き周り、アフィリエイトで稼ぐようにすらなります。

AirBnBで借りた部屋にあるすべての備品(食器、ベッド、家具、遊具、健康器具など)がARグラス経由で簡単に購入できるようになっており、それがホストにとって重要な収入源になる時代が来ます。気に入ったものを持って帰ると、自動的にチャージされるようになる可能性も十分にあります。

実店舗においては、AmazonGoのような商品購入体験が当たり前になり、それが最終的には店舗の外にまで広がります。フードトラックがトラックの前に並べた食べ物を、通りすがりの人が手に取って立ち去るだけで、自動的にチャージされるようになります。そんな世界では、ペイメントのビジネスがプラットフォームとして重要な役割を果たし、ペイメントの仕組みを持っている人と、そうでない人のライフスタイルに大きなギャップが生じます。

名所旧跡の3Dツイン(もしくは4Dツイン)を活用した「バーチャル・ツーリズム」も身近なものになります。飛行機で移動することが困難になった高齢者向けのエンターテイメントとして、大きなビジネスになると期待できます。当然ですが、そこでもARを活用した広告ビジネスや小売ビジネスがさかんに行われます。「バーチャル・ツーリズム」で訪問する、名所旧跡そのものが「お土産屋」としての機能を果たすようになるのです。

「バーチャル・ツーリズム」が新しい形のソーシャル・ネットワークとして機能する可能性も十分にあります。エジプトのピラミッドをバーチャルに訪れている高齢者が孫を部分的に招待し、一緒にピラミット見学を楽しむ、遠距離恋愛をしているカップルがウィーンを訪れて一緒にオペラ鑑賞をするなどの行動が、ごく普通のライフスタイルになるのです。

4Dツインは、スポーツ観戦のありかたを根本的に変えます。VRグラスを装着し、フィールドの任意な場所に視点をおいてスポーツを楽しめるようになります。サッカーゲームを特定のフォワード選手の視点で楽しむことも出来るし、ペナルティ戦をゴーリーの視点で臨場感を持って観ることも出来ます。

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