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廃棄されるパンの耳を使った「クラフトビール」

一方で、廃棄されるパンの耳を使って、クラフトビールを製造しているのが、門司港レトロビール(本社・福岡県北九州市)が経営する「門司港地ビール工房」。商品名は「ブレッドヴァイツェン」で、22年7月13日に発売した。

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ブレッド ヴァイツェン 出典:門司港レトロビールHP

アルコール度数5.5%の発泡酒で、価格は350ml缶・550円。北九州市内の酒販店や自社サイトの通販を中心に販売されている。

全国地ビール醸造者協議会(JBA)の「JBA全国地ビール品質審査会 最優秀賞」を2019年と21年に2度も受賞するなど、各種品評会で高く評価されている、門司港ビールの代表作「ヴァイツェン」をアレンジした。「ヴァイツェン」は原料の50%以上に小麦麦芽を使っているのが特徴だ。

「ブレッドヴァイツェン」では、小麦麦芽の代替として約1割をパンの耳に変えることで、泡立ちが良く後味がマイルドな逸品に仕上がった。原料のパンの耳は、北九州市小倉北区のクラウン製パンから調達している。

廃棄されるパンの耳がビールに 出典:門司港地ビールHP

廃棄されるパンの耳がビールに 出典:門司港レトロビールHP

クラウン製パンは学校給食用の食パンを製造しているが、福岡県では、子供にとってパンの耳の部分は硬すぎるとして、給食には出していない。パンの耳は、多い日には1日に100kgにもなり、廃棄するのではなく、有効な活用法を模索していた。焼き上がったパンのブロックで、耳にあたる両端を切り落として、一部を家畜の飼料などに再利用していたが、それでも廃棄が出る。そこで、思いついたのが、ビールの原料にすること。

紀元前3000年頃の古代メソポタミアでは、パンを乾燥させて水を加え、発酵させてビールを製造していたことが、粘土板に記録されている。ビールは「液体のパン」と呼ばれることもあるほどで、ビールとパンには食文化史上、密接な関係があった。

小倉駅前にある、門司港地ビール工房のビアレストラン 出典:門司港地ビールHP

小倉駅前にある、門司港地ビール工房のビアレストラン 出典:門司港レトロビールHP

「ブレッドヴァイツェン」は地元、北九州市の企業が食品ロスの解決のためにタッグを組み、品質の高い新しい商品を生み出したことに意義がある。

 

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