コロナ禍で行き場を失った野菜を「野菜炒め」に。地球にも財布にも優しい「ベジ郎」
コロナ禍で行き場を失ったレストランやホテル向けの野菜を使った、野菜炒め専門店を開いたのが、フードサプライ(本社・東京都大田区)。同社は元々、外食向けの野菜卸を営む会社だ。
21年12月、渋谷の東急百貨店近くに「ベジ郎」1号店の渋谷総本店をオープン。好評につき、22年4月には池袋に2号店の池袋東口店をオープンした。
また、22年10月4日には、東京都小平市の立川通り沿いのロードサイドに3号店の東大和店をオープン。この東大和店が初のFC店でもある。渋谷や池袋の店の顧客は若者が中心だが、東大和店ではファミリー層も狙って、チャーハンや揚げ餃子もメニューに加えた。
さらに、22年12月15日には、千葉県松戸市の松戸駅東口駅前に、4号店で、FC2店目の松戸東口店をオープンした。
「ベジ郎」の野菜炒めは、「ラーメン二郎」の野菜タワーを彷彿させる、山盛りの盛り付けが特徴。野菜には背脂がたっぷり乗っていて、マシマシで注文すればさらに野菜の分量を増やすことができる。
同社は、関東圏を中心に約5,000件の飲食店向けに野菜を卸していたが、コロナ禍での需要減退で、大量廃棄される業務用の野菜を、どうすれば有効活用できるのかを模索。
車で買いに行ける非接触性を追求した「ドライブスルーは八百屋」を20年4月に提案した。これは、コロナ禍に入ってから、「マクドナルド」、「KFC」など、ドライブスルーでテークアウトができる飲食店の前に、車の渋滞ができるほど、顧客が殺到していたことにヒントを得た。
ドライブスルー八百屋は人気となったが、やがて飲食店が再開されてくると、廃れてくると読んでいた。そこで、飲食店の需要がコロナ前よりも落ち込んだ分を、野菜を大量に使う、野菜炒めの店で消費できないかと考えた。
また、年間約570万トンと言われる食品ロスの過半数を事業系が占めるが、野菜を加工・調理する過程で、廃棄してしまう部分を有効活用するメニューを考案した。
野菜炒めには400gの野菜を使用し、一皿580円で1日分の野菜を摂取できる。ボリューム満点の唐揚げを乗せた、肉野菜炒めも780円で販売。味付けは、醤油、ポン酢、味噌の3種類から選べる。野菜マシ無料、マシマシが50円プラス。背脂の有無も選べる。定食はプラス100円で、ご飯とスープが付く。
もったいない野菜を使って、若者で行列ができる繁盛店を構築した、二郎インスパイア系野菜炒め専門店「ベジ郎」。食品ロスを、野菜不足を気にする若者を対象にした外食へと昇華させて、見事にアイデアで解決した。
以上、街のパン屋で売れ残ったパンを集めて売り切る「夜のパン屋さん」、給食用パンの廃棄される耳をビールに使う「ブレッドヴァイツェン」、コロナで余った業務用野菜で野菜炒め専門店を流行らせた「ベジ郎」。
食品ロスを解決して、ゴミを減らし、環境に優しく、生産者にも消費者にも喜ばれ、ビジネスとしても成功する事例が、続々と誕生している。食品廃棄物こそ、実はニュービジネスの宝の山なのではないだろうか。
image by: 長浜淳之介