政権批判の高まりは何を招くことになるのか
3期目の発足当初から難題に直面した習国家主席は、ここでゼロコロナを大幅に緩和させる決定を下した。その背景にあるのは、やはり内からの脅威だ。習国家主席は3期目で自分の神格化を目指しているが、そのためには国民から支持され、象徴にならなくてはならない。そのためには初めからこけるわけにはいかず、今回、理想と現実の狭間でバランスを取らざるを得なかったのだろう。
10月の共産党大会の前後、北京市北西部にある四通橋では「ロックダウンではなく自由を、PCR検査ではなく食糧を」、「独裁者習近平を罷免せよ」などと赤い文字で書かれた横断幕が掲げられ、上海でも若い女性2人が「不要」などと書かれた横断幕を持って車道を歩く動画がツイッター上に投稿された。それくらい習独裁体制への不満が強まっており、今回はウルムチでの火事でその不満が一気に爆発した形になった。
仮に、習3期目に対する非難の声が抗議活動として今後顕著になれば、まず、習国家主席は国民の非難をかわすため、対外的に強硬姿勢に転じることで国民のナショナリズム、忠誠心を高揚させる戦略に出る可能性がある。そうなれば、米中対立はいっそう激しくなるだけでなく、台湾情勢でも緊張がいっそうエスカレートし、我々は台湾有事を現実問題として考えることになろう。そして、そうなれば日中関係も悪化し、対中邦人が意図的に拘束逮捕されるケースが必然的に増えることになる。
第2の天安門、もしくはそれ以上の衝突も
だが、問題なのは現代の中国人が習国家主席の思うように動くかということだ。現在の中国人の中には欧米など諸外国に留学駐在し、欧米文化などを熟知し、それに親しみを持つ人々が少なくない。若い世代の中には自由や民主主義を重視し、共産党体制に違和感を抱く人々も多い。以前のように中国人ナショナリズム、中華民族の偉大な復興などに共鳴する可能性は低いと言える。
対外的強硬姿勢に転じたことで結果が出ないとなれば、第2の天安門、それ以上の衝突が習3期目で到来することもあり得よう。習国家主席にとって重要となるのは政権基盤を安定させるであり、そのためには国民の反発を治安維持や武力をもって抑える必要がある。習国家主席の3期目は、こういった内から反発と外の敵(米国など)との間でバランスを取りながら政権運営をしていくことになる。しかし、それは簡単なことではなく、たとえば第2の天安門となれば、中国国民と世界が結束する恐れもあり、習国家主席としてはそれはなんとしても避けたいところだ。習政権3期目は1期目2期目以上に難題に直面することになろう。反ゼロコロナはその始まりでしかない。
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