犯罪組織が鮮やかに盗みだした「ドレスデン城の財宝」を司法取引で取り戻す、先進国ドイツの物騒な一面

 

組織的暴力団が支配する無法地帯も。ドイツの知られざる一面

ドイツには、マフィアのような血縁集団の組織的暴力団が数多く存在する。ベルリン、ケルンなどいくつかの都市の一部には、彼らが支配する、警官さえ足を踏み入れたがらない無法地帯も形成されている。

問題の根は深く、70年代にまで遡る。当時、ドイツ政府は、内戦下のレバノン人、そして、トルコで抑圧されていたクルド人(トルコ国籍)を難民として受け入れた。しかし、それが裏目に出て、現在ドイツの犯罪の統計を見ると、その頂点にいるのがクルド・マフィアとレバノン・マフィアだ。彼らの犯罪は多岐にわたり、すでに様々な利権を獲得、暗躍できる法律のグレーゾーンも拡大している。下手に告発すれば、裁判で検察が負ける可能性も高いというから、彼らはまさにビジネスライクで、プロなのだ。

ドレスデン事件から1年経った20年11月、ベルリンの犯罪組織の中でも特に名を馳せている「レンモ」が大掛かりな捜索を受けた。レンモ家を中心としたレバノン系のグループで、メンバーが1000名を超える大世帯だ。強制捜査に至った経緯は、警察がフランスの諜報機関からの通報で闇のチャット網の解読に成功し、それにより、ドレスデン事件にレンモが関わっている証拠を掴んだのだという。その後の捜査により6人が起訴され、22年の初めからは厳戒態勢の下で裁判が始まった。しかし、その頃には、この話題はニュースから消え、皆が忘れてしまっていた。

その年、12月中旬までの11ヶ月の間に33回の公判が開かれ、わかっているのは、被告6人は23歳から29歳の間の若者で、苗字は全員レンモだということ。ただ、彼らは口が固く、盗品の返却に対する報奨金150万ユーロという誘惑にも乗らなかった。

しかも、6人のうちの2人は、2017年3月にベルリンのボーデ博物館から100kgの巨大な金貨、カナダのビッグ・メイプルリーフ(カナダが5枚だけ製作した特別金貨で、当時の時価で1枚375万ユーロ)をあたかもゲームのように盗み、世間を騒がせた若者たちだった(なぜ、彼らが自由に動き回っていたのかは報道されていない)。

ちなみに、ビッグ・メイプルリーフは消えたままで、おそらく溶かして小分けにして売り飛ばし、レンモの資金源になったと見られる。それもあり、ドレスデンの宝物も、裁判が長引けば長引くほど、ダイヤモンドや宝石が個別に売り払われる懸念が高まった。いや、すでにそうなっているかもしれなかった。

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