2.脱欧州トレンドと顧客志向
アパレル製品の商品企画をする時、何からスタートするのでしょうか。これまでは、欧州のトレンド情報を基本にして、商品企画を組み立てていました。しかし、この手法は顧客志向とはいえません。
欧州のトレンド情報は、欧州の業界が市場を情報操作するために行っています。トレンド情報発信の背景には、世界の市場は一つであり、世界中の市場は欧州のトレンドに従うものというグローバリズムの思想があります。
顧客志向では、それぞれの国や地域の顧客は多様であると考えます。欧州のトレンド情報を押しつけるのではなく、実際の顧客の売上データや顧客の声を優先します。
また、アパレル企業の社長やデザイナーがつくりたい商品を作るのではなく、顧客が求めている商品を作るという姿勢が必要になります。作りたい商品を押し出すのではなく、市場のニーズを引き出して商品を作るという発想です。
会社の組織も変革が必要です。これまでの会社の組織図は、ピラミッドのような三角形です。最上部に社長がいて、底辺に販売担当がいます。顧客はその下にいるということです。
顧客志向の経営では、組織図は逆三角形になります。最上位に顧客を置き、その意見を販売担当が収集し、それを商品企画に落としていく。最も下の位置に経営者がいて、全ての責任を負います。
組織図が変わっても、仕事が変わるわけではありませが、これを見ることにより、意識が変わります。常に顧客優先で経営を考えることにつながるのです。
3.ステイタス訴求からライフスタイル訴求へ
見栄を張ることは、ファッションにとって重要です。実際の自分以上の姿を他人に見せたいという願望です。明るく、リッチで積極的な姿が魅力的に見えます。加えて、社会的地位、ステイタスが高いという印象を与えたいのです。
低成長時代になると、次第に見栄を張ることが愚かに見えるようになります。ゴージャスで装飾的なファッションは成金趣味として嫌われます。
むしろ、本物のお金持ちほど、一見すると質素でシンプルな生活を好むと考え、その生活スタイルに憧れるようになるのです。
ステイタスファッションは、非日常的なシーンでこそ映えます。非日常的なパー
ティーに参加すること自体がステイタスだと考えているからです。派手でゴージャスで目立つこと。エネルギーを周囲に発散しているイメージです。
ライフスタイル訴求のファッションは普段着、カジュアルウェアが中心です。非日常の生活にこだわるのでなく、日常の生活にこだわる暮らし方。日常生活にこそ上質なベーシックアイテムを選びます。トレンドを楽しむなら、ファストファッションで十分。ベーシックなファッションこそ、自分の個性を表現できると考えるからです。
低成長時代でも、所得の多い顧客はいます。しかし、時代の変化と共に、選ぶ商品が変わります。
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