2024年度施行の「障害者総合支援法」改正を現場はどう見ているのか?

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障がい者の生活や就労を支援する「障害者総合支援法」。2005年に成立した同法の改正案が、来年度より施行されることをご存知でしょうか。今回のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』では、要支援者への学びの場を提供する「みんなの大学校」学長で、障害者総合支援法に基づく就労サービスのひとつである「就労継続支援B型事業所」運営者の引地達也さんが、この改正案の要点を解説。その上で、現場に身を置く人間としての受け取り方と要望点を綴っています。

国会で可決した「支援法」改正案は、社会とのミスマッチを本当に改善できるのか?

2022年12月に国会で可決した「障害者総合支援法」改正案は2024年度から施行される。

「障害者総合支援法改正法施行後3年の見直しについて(議論の整理)」としてまとめられた改正案は「障がい者の地域生活」「社会的ニーズへの細かな対応」「質の高い障がい福祉サービス」の3つの柱からなる。

多様な就労ニーズへの支援と障がい者雇用の質の向上を目的とした改正は、自分の就労支援に関する動き方を再考しなければならない。

これは障がい者雇用でミスマッチが生じている現状を改善しようとする中で考えられたものであり、福祉サービス全般に対して、これまでの動き方からの変化を促すものでもある。

私の解釈では就労系サービスにおける当事者視点での支援とその共有が益々重要で、支援でのコミュニケーションの質の高さが求められる。

同時に改正案が促す行動の変容は、当事者にとっては自分の就労イメージに近づける希望の道筋として捉えたいと思う。

障害者総合支援法は、正式名称を「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」と言い、社会における障がい者の考え方を反映してきた。

当初は「障害者自立支援法」という名称であったが、「自立」への批判も起き、2013年から「障害者総合支援法」に変更された。

基本的には障がい者が福祉サービスの給付制度や、障がい者の生活支援を充実させることを目的とし、重度訪問介護の対象者の拡大や地域生活支援事業の実施など、障がい者福祉の内容の拡充を図ることも明記されている。

今回の改正案は柱のひとつである「障害者の多様な就労ニーズに対する支援及び障害者雇用の質の向上の推進」で示しているのは、就労希望者がより自分に合った仕事に就けるような仕組みを構築するための「就労選択支援」を創設である。

この支援の具体的な形はまだ見えないが、どのような職が適切かをはかる「就労アセスメント」の考え方を援用する形を想定しているようである。

背景には障がい者雇用の仕事のミスマッチが職場でのうつ病の発生などの二次障害や就労の定着の難しさの要因として考えられており、この解消を目指しているのであろう。

現場の感覚からは、それが「アセスメント」の質の向上だけで解決するとは思えない。

どんな支援も同じなのだが、支援におけるコミュニケーションの質が確保されてなければ、よいアセスメントにはたどり着けないだろう。

就労支援の中で本人の希望の尊重と、その尊重に沿った形で選択できないかを支援側も配慮することになるのは当然で、それは当事者の思いを共有するコミュニケーションの力が試されることになる。

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