日本の「狙い」と露骨なほど反対の行動を取るフランス
だが、日本にとって最大の問題は欧州諸国だろう。ロシアによるウクライナ侵攻以降、日本は対露制裁で欧米と足並みを揃え、ウクライナへは多額の援助を行い、多くのウクライナ市民を受け入れ、世界的にも日本の支援は評価されている。日本としてはそういった行動を示すことにより、NATO諸国がインド太平洋に関与し、今のうちから“拡大対中包囲網”のようなものを作りたいのだが、欧州諸国の間にはそれに懐疑的な国が少なくないのだ。
たとえば、その1つがフランスだ。フランスのマクロン大統領は今年春、中国を訪問した際、習国家主席から国賓級のおもてなしを受け、帰国直後のメディア取材で、“台湾有事で欧州は米中どちらにもつくべきではない”とインド太平洋での紛争に巻き込またくない本音を暴露した。また、G7広島サミットでは、議長声明を策定する際、中国を過剰に刺激するべきではないと対中非難でトーンを落とす文言に変えるよう要求し、NATOのインド太平洋への関与の象徴となるNATO東京事務所設置についても、それに反対する意思を最近示した。
フランスほど日本のやりたいことに反対の行動を露骨に示している国はないが、実際同じように思っている国は多いことだろう。人間の一般的な心理として、遠くで起こっている戦争に巻き込まれたくないという感情は当然のことで、西欧諸国は対ロシア、対中国どちらの紛争にも巻き込まれたくなく、ロシアの脅威に直面する東欧諸国はなおさらだろう。
日米と欧州のデカップリングを画策する中国
また、欧州諸国の多くは経済で中国に深く依存している。NATOがインド太平洋への関与を強く示すことにより、中国と経済で結び付くNATO諸国の中にはそれに消極的姿勢を求める声が拡大することだろう。
中国も十分にそれを分かっていて、最近でもスペインの首相が中国を訪問して習国家主席と会談し、中国の首相がドイツとフランスを訪問したように、中国は欧州と日米のデカップリングを狙っている。日本が最も注視すべきは中国のこの動きで、今日、日本のNATO接近とこれは今日激しい競争関係にある。
image by: 岸田文雄 - Home | Facebook