イージス・アショアの二の舞いか。敵基地攻撃ミサイル論の無理筋

th20230718
 

2024年度からの開始が困難となった防衛増税。岸田政権は23年度から5年間の防衛費総額を43.5兆円にするとしていますが、極めて厳しい状況になりつつあります。この事態を受け「岸田大軍拡の見直し」を提言するのは、ジャーナリストの高野孟さん。高野さんは自身のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』で今回、見直すべき理由として軍拡路線の目玉である「スタンドオフ・ミサイル」論のあまりのいい加減さを上げるとともに、そこに透けて見える隠された狙いを白日の下に晒しています。

※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2023年7月17日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

河野太郎氏を再び防衛大臣に。「スタンドオフ・ミサイル」不要論

自民党の税制調査会が7月13日の幹部会合で、岸田政権が取り組む大軍拡のための増税を24年度から始めることは「もはや無理だということを確認した」。同会の宮沢洋一会長がそのように明言した。ということは、23年度から5年間の防衛費総額を43.5兆円、それ以前の5年間に比べ1.6倍にまで増やすという“意欲的”な閣議決定は、事実上、25年度からの3年間で無理やり達成するか、期間を繰り延べるかしなければならなくなることがほぼ確定した。そもそも財源について何の当てもないままこんな無謀な計画に踏み出してしまったことの矛盾が、早くも露呈した訳である。

23年度の防衛予算は6兆6,000億円(米軍再編関係費などを除く当初予算)で、これを27年度までの5年間合計43.5兆円にするには、24年度から毎年1兆円ずつ上乗せして27年度には11兆円超にまで持っていくスピードを確保しなければならない。それすら無茶な話であるというのに、1年遅らせて、24年度は23年度と同程度、25年度に1兆円上乗せだったと仮定すると、26年度に2兆円、27年度に4兆円をそれぞれ上乗せするという急カーブを描かないと到底間に合わないので、これはもう無理というものだろう。

無理なら期間を繰り延べればいいのだが、この1年間の遅れの政治的な意味合いは微妙で、仮に23年秋以降の解散・総選挙で自民党が敗北して岸田文雄首相が辞任するか、そうでないとしても24年秋の自民党総裁選で岸田が再選されなかった場合、25年度予算を編成するのは誰か別の人で、その人は岸田大軍拡を踏襲せず大幅に見直すか撤回するかもしれない。防衛費増が1年遅れて、発注も開発も量産・配備もまだ本格的に軌道に乗っていない状態なら、余計に見直し易いことになる。

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