破竹の勢いで急成長を遂げるも、2020年代に入るやその低迷ぶりが伝えられるようになった中国経済。東アジアの大国は、このまま沈んでしまうのでしょうか。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、ノーベル経済学賞学者のポール・クルーグマン氏による今後の中国経済の見通しを紹介。クルーグマン氏は巷間囁かれる「中国が日本のような道を歩むことになる」との見方を全否定しています。
ノーベル賞学者クルーグマンの見る中国経済の行方
私がメルマガを創刊して、24年になります。この期間、本当にいろいろな事件がありました。そして、私はいくつか重要な予測を当ててきました。
たとえば2005年に出版した初めての本『ボロボロになった覇権国家アメリカ』。この本は、一言でいえば、「アメリカ発の危機が起こり、アメリカが没落する」という話。実際、2008年にアメリカ発「100年に1度の大不況」が起こりました。そして、「アメリカ一極世界」は崩壊し、世界は「米中二極時代」に移行したのです。
2008年に出版した『隷属国家日本の岐路~今度は中国の天領になるのか?』では、「日本に親中政権が誕生すること」「尖閣問題から日中対立が激化していくこと」などを予測しました。この本が出た1年後、親中反米鳩山政権が誕生しています。さらに、2010年尖閣中国漁船衝突事件、2012年尖閣国有化で日中関係は、最悪になりました。
他にもいろいろありますが、この辺でやめておきましょう。
もう一点、中国経済の見通しについて。私は前述、2005年出版の『ボロボロになった覇権国家アメリカ』で、こんな予測をしていました。
- 2008~2010年に危機が起こる
- しかし、中国は危機を短期間で克服する
- 中国の高成長は、2020年まで
実際に2008年に危機が起こり、中国は速やかに乗り切りました。そして、概ね2020年まで高成長をつづけたのです。
なぜ18年前に私は、中国経済が「こうなること」を予測できたのでしょうか?「国家ライフサイクル」で見たのです。国家ライフサイクルには、
- 前の体制からの移行期(=混乱期)
- 成長期(前期と後期がある)
- 成熟期
- 衰退期
があります。日本は、1950年から成長期に入り、1990年までつづきました。その後バブルが崩壊し、成熟期、低成長の時代がつづいています。
中国は、ざっくり1980年から成長期に突入しています。つまり、中国は「30年遅れて日本の後を追っている」のです。検証してみましょう。
- 日本1950年代 = 成長期に突入
- 中国1980年代 = 成長期に突入
- 日本1960年代 = 安かろう悪かろうで急成長
- 中国1990年代 = 安かろう悪かろうで急成長
- 日本1970年代 = 世界の工場に
- 中国2000年代 = 世界の工場に
- 日本1980年代 = 「ジャパンアズナンバー1」「日本はアメリカを超える」と誰もが思い始める
- 中国2010年代 = 「中国はアメリカを超える」と世界のほとんどの人が考え始める
というわけで中国は、まさに「ぴったり30年遅れで、日本の後を追っている」ことがわかります。
問題は、次です。
- 日本1990年代 = 「暗黒時代」に突入
そうなると、
- 中国2020年代 = 「暗黒時代」に突入
ということになります。これが、私が18年前に見た、「中国経済の未来」でした。そして、実際にそうなっているのです(もちろんここでは、「骨子」だけを話しています。実際の分析は、もっと複雑です)。