マスコミの報道姿勢が別の犯罪を作ってしまう皮肉
さて、今回の場合、「象牙の塔」と言われる田中元理事長を中心にしたヒエラルヒーがあったのですが、タックル事件と巨額脱税事件によって林真理子理事長が入り、そのことから、「守旧派(旧田中理事長派)」と「改革派(林真理子派)」に分かれてしまうということになったのです。
その派閥争いに、「対抗意識」と「味方の結束力」を行う場合、最も強い結束力の内容は「秘密の共有」が最も良いということになります。
もちろん、その「秘密」が犯罪行為である必要性は全くありませんし、そのように考えた田中派が指示したというようなこともないと思います。
しかし、ある意味で「自分たちが田中理事長を(またはその時のアメフト部の監督やコーチを)追い出してしまった」というように学生が自主的に思ってしまった場合には、その「秘密の共有」ということの中で通常の倫理観とは全く異なる選択肢を選んでしまう可能性があるということは否定できないのではないかと思います。
そのうえ、「悪い大人」がいて、そのような大麻や覚せい剤などの非合法なものを勧めた場合、またはそのような「悪い大人」の中にアメフト部の先輩が入っていた場合、その道に入ってしまう人がいてもおかしくはないのではないかという気がします。まさに、「改革派と守旧派の対立を見ていた学生が、自主的に罪悪感を感じて、非合法の道に足を踏み入れてしまう」というような構図です。
この場合、日本のマスコミは集団リンチ的にこのような事件を取り上げ、袋叩きにしてしまいます。その場合の被害者、あえて「マスコミ被害者」と言いますが、その被害者は、様々な意味で結束を固め、なおかつ、「陰に隠れる」というような状況になります。
まさに「マスコミの報道姿勢がこのような別な犯罪を作ってしまう」ということがあるのではないかと思うのです。
そのことは、今回の事件では日本大学全体が対応できないような亀裂を作り出してしまったのではないでしょうか。
今回の事件、昨年のうちに通報がありながら、今年の7月までこのような状態が続いていた、つまり、アメフト部の寮の中では半年以上継続的に大麻が使用されていたことになります。もちろんどれくらいの頻度かわかりませんが、しかし、さすがに年1回ということもないでしょう。
ではなぜそのようになってしまったのか。それは守旧派が改革派に対して、事実を隠すようなことをしていたことまた、改革派は林真理子理事長の言葉にありましたがスポーツは不得意であり、学校の制度や組織を先に改革しようとして後手に回ったということもあったのではないかと推測するものです。
このように「前回の事件が対立を生み」、その対立が、一つは学生の間の事件を引き起こし、もう一つは、その事件の解決に際して大学が団結して行うことのできない心因的な環境になってしまったということになるのではないでしょうか。(メルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』2023年8月14日号より一部抜粋。続きはご登録の上、お楽しみください。初月無料です)
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image by: しんぎんぐきゃっと, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons