1円端末と転売ヤー撲滅がゴールに。総務省「端末割引規制」の本末転倒

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回線とセットでスマホを販売する時の割引の上限について見直しをしていた総務省は、4万円までは「上限2万円」、4~8万円は「上限50%」、8万円以上は「上限4万円」と、端末価格に応じて設定すると発表しました。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんは、この新規制について「本末転倒」とダメ出し。一般メディアが言うような「1円端末撲滅」などできないと語り、総務省が何もしない方が市場は健全になると訴えています。

総務省が割引上限を見直し。4~8万円端末は「上限50%」に──もはや何が目的なのか、本末転倒な政策に

総務省は9月8日、「競争ルールの検証に関する報告書2023(案)」において、パブリックコメントを受け、報告書の修正案を公表した。案では携帯電話端末の割引上限を「一律4万円」としていたが、これにNTTドコモやKDDIが異を唱えたことで「原則4万円」に改められた。ただ、4~8万円の端末は「割引前の50%」、4万円未満の端末は「2万円」に設定するという提言にまとまった。

この提言を受けて、一般メディアなどでは「1円端末を撲滅させる」的な見出しが躍っているが、結局、どんな割引施策に変更したところで「1円端末」が絶滅することはないだろう。

そもそも、総務省の端末割引規制は、目的を見失っており、なぜか最近は「1円端末や転売ヤーの撲滅」がゴールになっている。しかし、転売ヤーを生んだのは総務省の失策が原因であり、総務省が何もしないことが、市場の健全化、競争環境の整備につながるはずだ。もはや、総務省の規制は本末転倒となっている。

今回、原則4万円で、4万以下の端末は上限2万円、4~8万円は50%の割引上限となったが、このルールであれば、各キャリアは、従来通り「2万円程度」の端末ラインナップを強化する一方、4万円の割引がめいっぱい適用できる「8万円程度」の端末が増えるだけではないだろうか。

いまのラインナップを見ても、キャリアが扱うiPhoneSE(第3世代)の128GBモデルが8万円程度となっている。新しい提言を適用すれば、まずは4万円を引いて、購入補助プログラムを適用しつつ、残価も考慮したら、それこそ1円程度の負担で手に入れることも可能になるはずだ。店頭では「実質1円」をアピールするのだから、「1円端末の撲滅」にはなりっこない。

ただ、メーカーとしては、これまで7~8万円程度のラインナップを強化しようとしていたが、あまり上手くいかなかったこともあり、今回の提言で8万円を狙った商品企画が増えてくるかも知れない。キャリアや市場は2万円を求めるかも知れないが、やはり業界的には8万円程度のまともな端末が増えた方が健全だろう。

いずれにしても、総務省のよくわからないルールによって、キャリアやメーカー、販売代理店、さらにはユーザーが振り回されるのはもう勘弁だ。今回の改訂で、「転売ヤー」や「1円端末」が減らなかったら、2~3年後にまた新しいルールを作る気なのか。

もはや、市場に対して何のメリットも生んでいないばかりか、FCNTや京セラのようなメーカーを生み出すことにつながりかねないだけに、総務省には本当にいい加減、自分たちの過ちを認めて襟を正して欲しい。

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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