プーチンの思う壺。ウクライナが「見捨てられる」シナリオが現実になる日

 

金正恩との会談でプーチン大統領が得たもの

そして、北朝鮮がロシアに“日ごろのサポートの返礼”という形式で与えるのが、永続的な外交的なサポートと言われていますが、それは「今後、何が起ころうとロシアが帝国主義に対して戦うあらゆる行動を全面的にサポートする」という金正恩氏の言葉にも現れています。

ではロシア・プーチン大統領は何を得たのでしょうか?

ニュースを騒がせ、かつ欧米諸国の諜報機関を煙に巻いている「北朝鮮からロシアへの武器弾薬の供与」については、正直なところ、確定的な情報はまだ入ってきておりません。

しかし、プーチン大統領の「その可能性は大いにある」とのわざわざの発言はいろいろな推測を呼ぶこととなります。

ロシアはこれまでにイランやベラルーシなどから継続的に武器弾薬の供与を受け、時には国際情勢のカメレオンとも言えるトルコからも支援を得る構図が出来ています。

よく懸念が表明される中国による武器供与については、オフィシャルルートを通じたものは見つかりませんが、中ロ間のトレードを支える数々の迂回ルートを通じて供与が行われているのではないかと思われます。

その上、ワグネル経由でアフリカに持っていったロシア製の兵器を逆流させ、現在の対ウクライナ戦線に再投入しているという情報も、まだ確認が必要なものの、数多く入ってきています。

2023年2月24日にロシアがウクライナに侵攻した時点で言われていたロシアとウクライナの兵力量の比率は10対1という、ロシアが圧倒する状況でした。1年半の攻防とウクライナに対する欧米諸国からの支援の結果、その比率の差は縮まっていると言われていますが、米英の情報機関から時折観測気球的に出される「ロシアの弾薬量はもう底をつきかけているらしい」という内容を除けば、ロシアの物理的な優位はまだ変わっていないと思われます。

つまり、現時点で北朝鮮から表立って武器弾薬の供与を急ぐ必要には駆られていないと見ることが出来ますが、今後、そのような状況に陥る場合に備えた予備的な合意と言えるのかもしれません。

これに関して気になるのが、極東地域・シベリアへの北朝鮮労働者の入植を再開するという措置が合意されたらしいという情報です。

シベリア開発のためなのか?北朝鮮の外貨獲得のための措置としての許可なのか(ロシアンルーブルが金融制裁下に置かれている中、どこまでうまみがあるのかは不明ですが)?それとも、北朝鮮の軍が現時点では直接的に戦闘に巻き込まれることがないだろうとの見立てから、極東地域のミリタリーバランスを意図的に崩すための措置なのか?それとも全く別の理由なのか?

実際には見当もつかないのですが、何らかのサプライズが潜んでいるような気がしてなりません。

いろいろと憶測が飛ぶ事態ですが、2つはっきりしているのは、「反米陣営の拡大と協力の強化」という点と、それに関して「ロシア・北朝鮮が抱く“近くて遠い怖い国”中国への警戒心」での利害の一致と見ることができることです。

北朝鮮にとって中国は常につかず離れずの距離感で存在する“後ろ盾”ですが、いつ何時、見捨てられるかわからないという恐怖心に常に晒されていて、中国を引き付けておくため・繋ぎとめておくために、ロシアとの親密な関係を見せつけ、「あまり北朝鮮を放っておくとロシア側についちゃうよ」といったメッセージを暗に送り、中国からの継続的な支援と保護を確保しようという思惑が存在します。

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