有力化し始めたウクライナが見捨てられるというシナリオ
ここに複雑化する多国間のパワーバランスの揺らぎと勢力圏拡大に向けた動きが加速することで、次第にロシア・ウクライナ戦争に対する関心とコミットメントが薄れ、結果としてウクライナが見捨てられるというシナリオが有力になり始めています。
こうなるともうプーチン大統領の思うつぼでしょう。ウクライナ国内の政治的混乱を煽り、ゼレンスキー大統領を引き摺り下ろすことで、自分の言うことを聞く人物をリーダーに据え、ウクライナを再度、ロシアの属国化するという計画が実行可能になります。
それは13日のロシアと北朝鮮の首脳会談の実現を経て、これまでウクライナ情勢の争いの蚊帳の外にいた北朝鮮が輪の中に入ってくることで、さらに国際情勢は複雑化することに繋がります。
今回のプーチン大統領と金正恩氏の首脳会談を受け、“やばい国”が集っているのではないという観点が日本でも欧米諸国でも出されていますが、これははぐれ物の寄せ集めという位置づけではなく、各国の安全保障体制に対する大きな脅威の元になり得る危機です。
北朝鮮によるロシアへの武器供与は、仮に実現したとしても、ウクライナ戦線の結果を変えるほどの効果はないと思いますが、ロシアが北朝鮮に提供するロケット・ミサイル技術とノウハウは、北朝鮮の弾道ミサイルの性能を向上させ、ICBM級のものも含め精度が上がるようなことになると、ずっと以前から北朝鮮の核弾頭搭載可能な弾道ミサイルの射程に入っている日本はもちろん、アメリカも欧州各国も、北朝鮮のICBMの直接的な射程距離に入り、一気に緊張が高まる可能性があります。
その危険性がクリアに認識されだすと、現在、かろうじて維持されている軍縮の機運は萎え、各国は自国防衛と権益保護のための軍拡競争に舵を切り、国際社会は一気に一触即発の極度の緊張状態に進む可能性が高まります。
今週発足した日本の新内閣は経済問題と社会問題の他に“外交・安全保障”を3つの重要軸に据えていますが、このような状況に対応できるだけのキャパと決断力を持っているかどうか。それをしっかりと問う必要があると思われます。
以上、国際情勢の裏側でした。
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image by: 朝鮮労働党機関紙『労働新聞』公式サイト