ドコモが証券業参入で「経済圏」構築へ。先行する楽天に策はあるか?

Tokyo,,Japan,-,March,27,,2019:,A,Branch,Of,The
 

NTTドコモがマネックス証券を連結子会社にすることを発表。「経済圏」作りで遅れていたドコモの証券参入により、既存キャリア3社が先行してきた楽天に対抗する体制を整えようとしています。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんは、こうした動きに対し、楽天が強みの経済圏を生かしきれていない現状を指摘。このままでは3社の囲い込みが進み、ユーザーの流動性も失われてしまうと危惧し、苦しいなかでも楽天モバイルが対抗策を打ち出すことを期待しています。

NTTドコモがマネックス証券を子会社化して新NISAに本腰──金融経済圏で先行する楽天グループはどう戦うのか

NTTドコモは10月4日、マネックス証券を連結子会社化し、証券業務に本格参入すると明らかにした。これまで、2020年に起きた「ドコモ口座不正利用事件」の影響で、銀行や証券業務とは距離を取っていたが、KDDIやソフトバンクが金融を軸とした料金プランを開始するなど、金融との融合を強化していく中で、NTTドコモとしても心変わりしたのだろう。

2024年に開始される新NISAによるユーザーの「囲い込み」が本格化する。NTTドコモとしては1000万を超える「dカードGOLD」ユーザーがいるだけに、クレジットカードによる積み立て投資信託で大量にポイントを付与することで、新NISA口座のユーザーも一気に増やせる土壌があることは間違いない。

既存3社が金融シフトを進める中、なんとももったいないのが楽天グループだ。本来ならば、楽天証券や楽天銀行で先行しているのだから、もっと楽天モバイルとの連携を深めれば、ユーザーの獲得にも貢献したのではないだろうか。

確かに、楽天グループ全体としては国内株式の取扱手数料を無料にするなど、勢いのある楽天証券だけで、ユーザーを獲得できれば良いのかも知れない。ただ、もうちょっと出し惜しみをして、「楽天銀行ユーザーのうち、楽天モバイルも契約していたら、国内株式手数料0円」という施策であれば、楽天モバイルのユーザー獲得に貢献できたのではないか。

もちろん、SBI証券との競争環境もあり、「楽天モバイルユーザー限定」にはできなかったのだろうが、もうちょっと、楽天証券と楽天モバイルの融合というか、「グループの一体感」が欲しいところだ。

ただ、銀行や証券で、モバイルユーザーに対して、優遇施策を展開しようと思うと、モバイル側が優遇に関する負担を強いられることになるので、いまの楽天モバイルにはかなり厳しいのかも知れない。とはいえ、指をくわえてみていると、auカブコム証券やPayPay証券、さらにはマネックス証券に美味しいところを持っていかれるのではないか。

既存3社で、通信と金融を融合したプランが一般化していけば、それこそ、ユーザーの流動性が下がるのは間違いない。金融商品にも手を出すユーザーはお金に余裕があり、値下げプランにはなびかない人たちだろう。やはり、キャリアとしてはそうした優良顧客をガッチリと抑えることが重要であり、どちらかというと値下げプランになびき、あちこちと移動する人たちを無理して獲得する必要はなかったりもする。

既存3社が金融を強化することで、ユーザーの流動性は落ちる。これまで、2年縛りや解除料の見直しなど、総務省がユーザーの流動性を上げようと努力してきた数々の施策は水泡に帰すことになりそうだ。

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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