盛り上がっている大相撲。日本の歴史の中でも相撲を愛する人たちは多かったです。今回のメルマガ『歴史時代作家 早見俊の無料メルマガ」』では時代小説の名手として知られる作家の早見俊さんが、その中でも織田信長と相撲のエピソードを紹介しています。
相撲にも多くのエピソードを残している信長
大相撲、盛り上がっていますね。なんでも、若貴ブーム以来の人気だとか。若貴ブームの頃、白鳳のような絶対的な力士が不在で、場所ごとに優勝力士が違っていました。
そんな中、毎場所初日に優勝力士をぴたりと当てたのが解説の出羽錦忠雄さん。アナウンサーから優勝力士の予想を求められ、実にソフトな語り口で、「やはり本命は曙、対抗で小錦、武蔵丸、穴で貴花田、琴錦、水戸泉、大穴として見逃せないのが若花田に琴富士、ひょっとして舞の海ということも考えられますよ、それから……」と二十人くらいの力士を挙げ、千秋楽の日の解説でアナウンサーが、「今場所も出羽錦さんの予想通り○○関の優勝でした」と見事な的中ぶりをたたえていましたっけ。
ところで相撲にも信長は多くのエピソードを残しています。そんな中で最も信長らしいお話を。
ある日、安土で興行した相撲、あまりに大勢の見物人が押しかけたため帰り道が混雑して圧死者が出ました。事態を憂慮した信長は担当奉行(丹羽長秀?明智光秀?)に対策を講じさせました。奉行は帰る席順を決めるとか道幅を広くするという実に常識的な案を持ってきたとか。
信長はそれでは効果がないと却下し、こうやれと命じました。
「その日、一番面白い取り組みの後、わざとつまらない催しをやれ」
そうすれば帰る者と、見ていこうと残る者に自然と分かれるということです。
で、当日優勝力士が信長から弓を下賜され踊ったとか。これが弓取式の始まりと言われています。現在でもJRAなどではメインレースの後に最終レースを開催していますね。
本当かどうかわかりませんが、信長が常人とは違う発想をするということを示すエピソードと言えます。
最近の相撲界の吉事と言えば、琴の若関の大関昇進ですね。お父さんは幕内最高位が関脇でしたから、超えたことになります。また、お爺さんは横綱琴櫻、筆者が小学生の頃、綱取りを果たしました。当時、最高齢での横綱昇進だったと記憶しています。
琴櫻に関して思わぬ発見がありました。
007シリーズ第5作、「007は二度死ぬ」に出演していたのです。「007は二度死ぬ」は日本が舞台、日本で大々的なロケが行われました。映画の中でショーン・コネリーのジェームズ・ボンドが蔵前国技館を訪れるシーンがあります。
支度部屋に通され、当時の横綱佐田の山から升席のチケットを渡されます。升席で相撲観戦をしていると若林映子演じる日本の情報部員と接触、その間、土俵で行われる取り組みは若き日の琴櫻でした。
琴の若、次の次の場所から琴櫻を襲名するそうです。お爺さんのように横綱に成れるでしょうか。
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