Z世代の反発でケネディJr.を民主党候補とする動きも?
前嶋教授はまた、民主・共和両党が無党派層をどう取り込むかで激しく争う中で「一方、最終的に鍵を握るかもしれないのは第3の候補だ」として、無所属で出馬するロバート・ケネディJr.の名を挙げている。代々民主党のケネディ家出身だけに、同党予備選から脱落して無所属での立候補に転じたとはいえバイデンの票を奪いかねないし、また民主党支持層からは白い目で見られているケネディJr.の「ワクチン陰謀論」の主張は、逆に共和党支持層には一定の支持があるので、トランプの票を掠め取る可能性もある。
ただ現実には無所属での本選立候補はなかなか大変で、チェック式の投票用紙に名前を載せさせるには州ごとに法定の署名数を集めなければならない。必要な署名数は州によって様々だが、中には10万票以上が必要な州もあり、組織を持たない無所属候補にとって壁は厚い。
しかし、バイデンの心身上の限界が露わになった場合、あるいは彼のイスラエルによるガザ大虐殺に対するへっぴり腰の対応へのアラブ系のみならず広く「Z世代」と呼ばれる若者層の反発がいよいよ強まってきた場合、今はトランプ阻止のため何とか纏まっている民主党の中からも、左派や反戦派が「バイデンではトランプに勝ち切れない」と判断、ケネディJr.を担ごうという動きが出てくるかもしれない。何しろ、米ABCテレビが3月11日に発表した調査で、「バイデンが高齢すぎて2期目を務めるのは無理だ」と考える人は86%に達しているのだから。
本誌はケネディJr.が出てきた直後の昨年5月、No.1,206で「日本と世界の反戦・平和勢力はロバート・ケネディJr.を米大統領にして『全米軍基地撤収』の公約を実現させよう」との記事を掲げ、たぶん日本で最初にケネディJr.支持を表明した経緯もあり、流れがそちらに傾くことを期待して当然である。
【関連】“ケネディ一族の呪い”は解けるか?米大統領予備選に出馬するJFK甥の「公約」
以下に、彼のキャンペーン・サイト(※)から経済政策と平和政策を仮訳し《資料1》《資料2》として添付する。後者はNo.1,206で紹介したものに若干修正を施しただけのものだが、両者を併せ読むことで、米国が世界に対して「帝国」として振る舞うのを止めることが、国内の民主主義の再建や経済の非軍事化による再興とも繋がっているという彼の政策発想の正しさを理解することができるだろう。
(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2024年3月18日号より一部抜粋・文中敬称略。ご興味をお持ちの方はご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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