「史上最低の大統領」から一転。なぜ米でカーター氏再評価ブームが起きているのか?

Washington,,Dc,Us,-,Feb,8,,1977:,United,States,President
 

2期目を狙った大統領選でロナルド・レーガン氏に大敗を喫し、1期4年でその座を追われたジミー・カーター氏。そんなカーター元大統領を再評価する動きが今、にわかに広がっているといいます。その背景には一体何があるのでしょうか。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』ではジャーナリストの高野孟さんが、米英の有力紙に掲載されたカーター氏の業績を正確に伝える記事の内容を詳しく紹介。その上で、「カーター再評価ブーム」が巻き起こった要因を考察しています。

※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2023年3月13日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

道徳も良識も失くし弱り果てたアメリカで「カーター元大統領再評価ブーム」到来の訳

このところ何故か、今から数えて7代前、1977年から81年までの1期だけ米大統領を務めたジミー・カーターを再評価する声が湧き上がっている。2月22日付「ニューヨーク・タイムズ」に、伝記作家で『はぐれ者/ジミー・カーターの未完の大統領職』の著者であるカイ・バードが「ジミー・カーターの大統領の仕事ぶりはあなたの思っているようなものではない」と題して寄稿したのが、たぶんきっかけだろう。すぐに、英「フィナンシャル・タイムズ(FT)」の米内政担当記者エドワード・ルースが「カーター氏の真の功績」を書き(3月1日付日経に翻訳あり)、さらに3月10日付「ニューヨーク・タイムズ」はハーバード大学のジェニファー・ボイラン教授の「私を少しはマシな米国人にしてくれたのはジミー・カーターだ」という個人的な思想遍歴に触れたエッセイを載せている。

今さら、一体、何のこっちゃと思うけれども、トランプ前大統領によって米国像、米国人像がズタズタに引き裂かれ、最後は彼の支持者がトランプが落選した大統領選結果を不満として議会に乱入するという暴走まで演じた後に、バイデン現大統領がその始末を背負い込んで迷走を続けている中でどうこの国を建て直し衰退を少しでも食い止めるかを考えようとすると、カーターまで時計を巻き戻さなければならなかった――ということなのだろう。

しかしカーターといえば、1980年の大統領選を争ったロナルド・レーガンの陣営から「腰抜け」「軟弱」「史上最低の大統領」などと罵られて落選し、そのような歴史的評価が人々に浸透しているのではなかったか。いや、だからこそ苦心の「再評価」が必要になる訳なのだ。言ってみれば、ご本尊が行方知れずで信徒たちが誰を拝めばいいのか分からなくて混乱している時に、「そうだ、蔵の中にあの仏像があったじゃないか」と思い出した人がいて、早速、埃を払いピカピカに磨き上げて本堂に安置したといった風情で、それだけ今の米国は心の拠り所を見失っているということである。

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