このままでは「佐藤さん」しか存在しない国に。選択的夫婦別姓を導入しない日本で500年後に起こること

Tokyo,,Japan,-,Nov,19,,2020:,Japanese,Family,Name,Seal,
 

「選択的夫婦別姓にしないと…500年後は全員『佐藤』?」。4月1日付の朝日新聞に、エイプリルフールのジョークのような見出しの記事が掲載され話題となりました。そんなニュースを取り上げているのは、健康社会学者の河合薫さん。河合さんはメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で今回、東北大高齢経済社会研究センターが公表した試算結果を紹介するとともに、圧倒的に女性が不利となる「夫婦同氏制」を未だ法の定めとしている日本政府の姿勢を疑問視しています。

※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです

プロフィール河合薫かわいかおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

このままでは日本国中が「佐藤さん」になる危険性

ちょっとばかりおもしろい試算結果が公表されました。

もし、選択的夫婦別姓が導入されない場合、約500年後の2531年に、日本人の全員の名字が「佐藤さんになる?!」というのです。

推計したのは、東北大高齢経済社会研究センターの吉田浩教授です。現在、国内で最も多い名字は「佐藤」で、全体の1.5%を占めます。結婚した場合、ほとんどの妻が夫の姓を名乗るので、「このままいくと佐藤さんだけになるかもしれない」との仮説を検証したところ、2446年に日本人の50%が「佐藤」になり、2531年に「佐藤」の占有率が100%に。一方で、選択的別姓が導入された場合は、2531年時点でも佐藤姓の占有率は7.96%にとどまり、多様な名字が保たれるという結果だったそうです。

2531年…って。笑

かなり先の話なので、このとき「結婚」という制度があるかどうかはわかりませんが、全員が「佐藤さん」だと苗字自体が意味をもたず、苗字という概念(?)はひょっとすると消滅してるかもしれません。これはこれでややこしい気もしますが。

いずれにせよこの試算結果が意味するのは、これだけ多様性だのなんだと謳われているのに、「結婚」という制度だけが多様性から切り離されているという“不自然”を数字で示した点にあります。それは同時に「男性優位社会」への警鐘であり、「個人の尊厳とはなにか?」という
問いかけではないでしょうか。

そもそも法律で規定された「夫婦同氏制」をいまだに採用してるのは世界で日本だけ。ほとんどの国がいくつかの選択肢を持たせています。

アメリカでは1970年代に選択的夫婦別姓を導入し、ドイツも1993年に民法を改正し同制度を導入。2005年にはタイ、2013年にはオーストリア、スイスが選択的夫婦別姓を導入しています。

何度も本メルマガでは書いてきましたが「選択的」なのです。「各々の姓を名乗り続けろ!」と強制してるわけじゃないのですから、私には「選択的夫婦別姓」に反対すること自体、全く理解できません。

世界はとっくに「姓」の問題から「性」の問題に推移し、同性だろうと何だろうと「2人が幸せならいいじゃない」という認識が広がっているというのに。いまだに日本では「子供がかわいそう」という思考停止ワードで議論すら行われていません。

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