自民党内から「岸田を羽交い締めにしてでも解散させるな」の声。それでも狙う“6月解散総選挙”で手を切る相手、組む相手

 

「6月解散総選挙」なら自民はどれだけ議席を減らすのか

しかし岸田は「サプライズ好き」と言われる。それに、ここで大博打を打たなければ結局、9月に不出馬=引退となる可能性大なので、玉砕覚悟の一か八かの勝負に出る道筋を最後まで追求するのだろう。

本当に「6月解散」をやった場合、どういう結果になるかを、『週刊ポスト』4月27日号や『週刊文春』4月18日号が報じている。ポストは、政治ジャーナリストの角谷浩一と青山和弘の予測、同誌編集部による自民が前回選挙より得票数を10%減らした場合のシミュレーションを示しているので、それらをABCとした。文春は同誌による分析と現地取材でまとめていて、これをDとした。結論はこうなる。

        《週刊ポスト》     《週刊文春
    前回 A角谷 B青山 C本誌    D 
自民  261  92   198  184    186
公明    32  30   22   29      22
与党計 293  222   220  213    208

立憲    96  157   149  166    147
維新    41  47   59   50     62
国民    11  13   10   11     16
共産    10  12   12   10     10
社民   1    1    1   1     1
その他(略)

公明を切って維新連立で長期政権化も視野に

過半数は233である。

  1. A~Dいずれでも自公は過半数割れする。
  2. Aの場合、自公+国民=235で辛うじて過半数に達するが、他の場合は国民だけを巻き込んでも達しない。
  3. 自公+維新の連立となった場合、3党合計はA~D=269、279、263、270で楽々過半数維持できる。
  4. しかし公明が維新に反発して与党離脱、自維のみ連立となった場合、自民+維新=239、257、234、248で何とか過半数を超える。

従って、補選で振るわず気落ちしている維新に裏から働きかけて、「自維連立で行きたい。公明や国民がそれでも付いてくると言うなら尚更結構だが、基軸を自維に移したい」というようなことを言えば、乗ってくるのではないか……と岸田は踏んでいるのかもしれない。そうすれば、自公で過半数割れでも政権は維持、9月総裁再選を果たし、それからは憲法改正を含め大胆な政策を掲げて来年7月の衆参同日選で勝利、長期政権へ、と。

ただし、公明抜きの自維連立という構想の致命的欠陥は、公明が都道府県議員206人+市町村議員2,667人を擁しそれを支える創価学会の組織を(衰えたとはいえ)全国隈なく維持しているのに対して、維新は74人+406人で支持団体もなく、自民が今や創価学会を最大の選挙協力団体としているのに取って代わることなど到底出来ないというところにある。

さてこの与党状況に対し立憲はじめ野党はどう戦いを構築すべきなのか。それはまた来週に考えることにしよう。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2024年5月6日号より一部抜粋・文中敬称略。ご興味をお持ちの方はご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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