京大教授が激怒。なぜ自民党は“事実上の賄賂”である「政治資金パーティ券購入」の規制に必死で抵抗するのか?

 

いかにしてパー券購入による「贈収賄リスク」を回避すべきか

そもそも(パーティ券購入代も含む広義の)「政治献金」は本来「この立派な政治家(あるいは派閥)にがんばってもらって、日本をよくしてもらいたい、そのためにこのお金を役立てて貰いたい」という思いのみに基づいて支払われるべきものである。それが政治資金規正法の根本的理念だ。

しかし、政治献金はそもそも「お金のやり取り」に過ぎぬものであり、かつ、そのやり取りの背後にある人の心を明らかにすることは原理的に不可能であることから、常に、「賄賂」のリスク(つまり、払った側が、受け取った側から何らかの“便宜”を図ってもらいたいという下心があって払い、かつ、受け取る側もそれを理解した上で受け取る、というリスク)をはらんでいる。

したがって、そのパーティ券購入行為を含めた政治献金行為における「贈収賄リスク」を回避するには、「禁止」するか、最低限でも「氏名公表」する他ないのである。だから政治資金規正法では外国人の寄附は禁止されており、寄付額も5万円を超えれば全て公表せねばならなくなっているのだ。

そしてもしも、企業・団体側にそういう贈賄の意図が皆無であるのなら、禁止についても公表についても何ら反発する筈などない、いうのは先にも紹介したTV上での発言で示唆した通りだ。

したがって、今回の自民党の政治資金規正法改正に対して、現状を可能な限り変えたくないという意図が見え見えの中途半端な態度は、現状のパーティ券購入が「事実上の賄賂行為」として機能してしまっていることをあからさまに示すものであると解釈せざるを得ないのである。

その意味において、自民党、とりわけ現在の岸田文雄氏における庶民を軽視し、大企業や諸外国の利益を重視してばかりの悪夢のような現下の政治状況を幾ばくかなりとも改善するためには、「外国人のパーティ券購入の全面禁止」を行い、その上で、すくなくとも公明党提案である「パーティ券5万円以上は公表すべし」という案を採択することが極めて効果的なのである。

今、岸田文雄総裁に求められているのは、こうした議論に基づく誠実なる対応なのだが、果たして彼にそれだけの誠実さは残されているのだろうか。それこそが今、我が国日本において何よりも大切な問題なのだが…。

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京都大学大学院・工学研究科・都市社会工学専攻教授、京都大学レジリエンス実践ユニット長。1968年生。京都大学卒業後、スウェーデンイエテボリ大学心理学科客員研究員,東京工業大学教授等を経て現職。2012年から2018年まで内閣官房参与。専門は、国土計画・経済政策等の公共政策論.文部科学大臣表彰、日本学術振興会賞等、受賞多数。著書「プライマリーバランス亡国論」「国土学」「凡庸という悪魔」「大衆社会の処方箋」等多数。テレビ、新聞、雑誌等で言論・執筆活動を展開。MXテレビ「東京ホンマもん教室」、朝日放送「正義のミカタ」、関西テレビ「報道ランナー」、KBS京都「藤井聡のあるがままラジオ」等のレギュラー解説者。2018年より表現者クライテリオン編集長。

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【著者】 藤井聡 【月額】 ¥880/月(税込) 【発行周期】 毎週 土曜日

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