重要なのは、相手にしゃべってもらう技術だった
人とのコミュニケーションをとるためには、会話が必要だ。そしてできるだけ相手にしゃべってもらうほど、コミュニケーションが加速する。
では、どうやってしゃべってもらえばいいのか?
そもそも見知らぬ営業マンを目の前にすると、誰でも口が重くなる。当然だ。下手に気を許したらどんどん侵入しているのがわかっている。だからガッチリとガードして、すきをつくらないようにしている。営業が笑わせようとしてきても、頑張って笑わないようにするものだ。できるだけこちらかはしゃべらないようにする。
そんな相手に話をしてもらうことを考えてみよう。ちなみに私も普段から無口である。こんな私に営業するのは、ちょっと大変だろうと思う。必要以上にしゃべらなくなるからだ。しかし、こんな私が自らしゃべりだしたら、それは、(営業側にとって)大きなチャンスである。心を開き始めている証拠だからだ。
雑誌の取材を受けているときも、ときどき自分でも驚くほどしゃべるときがある。気分が乗ってきてしまうのだ。相手が聞いてもいないことまで、どんどんしゃべっている自分がいる。そして、そんなときは気持ちがいい。普段はしゃべるのに苦痛さえ感じている私が、気持ちよくしゃべるときがある。それは、相手が私の話を“興味深そうに”聞いてくれるからだ。
こんな私の話を真剣に聞いてくれる!
じゃあもっといろんな話もしようかな!
そんな気にさせられるのである。
そしてここが重要なのだが、そうして私に気持ちよくしゃべらせてくれた記者というのは、しっかりと憶えているし、好感度が高いのだ。これは営業でも同じことが言える。気持ちよく話を聞いてくれる営業マンに対しては、好感を持つのである。ただ聞いてくれるだけ。話をさせてくれるだけでいい。対等に話をする必要などはないのである。お客様の話の内容がよくわからないこともあるだろう。知らないことを話されることだってある。そんなときは、素直に聞けばいい。
「その話、よくわからないんですけど、どういうことですか?」
「それは知りませんでした。詳しく聞かせてください」
これで十分会話が成立するのである。なにも、同じような知識がなくてもいいのだ。わからないことがあったら、それをどんどん質問して掘り下げていく。
で、ここでひとつポイントがある。相手が、「よくぞ聞いてくれた!」と身を乗り出して話したくなるような質問がある。私もこの質問をされると、柄にもなく前のめりになって話をしてしまう。