コオロギ食は「ネットの陰謀論」より「ステマ疑惑」の総括が先
前出のネットメディア編集デスクが続ける。
「コオロギを食べると不妊になる、コオロギ食は人口削減計画の一環だ、などは“必ず論破できるトンデモ論”の典型です。特に後者に関しては、コオロギ食反対派の中でも信じている人はほとんどいない珍説中の珍説。でも、アストロターフィング(ニセ草の根運動)の手法を用いれば、このようなトンデモ反対意見をいくらでも人工的に作り出すことができてしまうのがSNS時代です。そんなものにいくら反論してみせたところで、コオロギ食の安全性や正当性をきちんと説明したことにはなりません。
本来、渡邊社長が誠実に向き合うべきなのは、たとえば、一時期のコオロギゴリ押しブームとは何だったのか?大規模なステマだったのか?それとも本当に自然発生的なムーブメントだったのか?会社として関知していたのか、いなかったのか……といったことの総括です。中心にいた当事者の一人として、説明責任があるはずです。
時系列を振り返ると、グラリス社が炎上する前に、メディアやインフルエンサーがコオロギ食を“次世代のスーパーフード”と持ち上げ、国会議員が昆虫食を試食するという、あからさまなコオロギゴリ押し現象が発生していました。高校の給食が炎上したのは、そのゴリ押しへの強い反動という側面が大いにあります。ネットのデマで会社が破産したと主張するよりも前に、ネット民を辟易させたステマ疑惑と向き合わなければ信頼は取り戻せないと思いますよ」(前同)
昨今はコオロギ食に限らず、反対派すらほとんどが信じていない“珍説”をどこかから探してきて、それを“論破”し、さも勝ったような顔をする人間が増えている。詭弁の種類としては、「相手が言っていないことに反論する」ストローマン(藁人形論法)の変形にあたるが、今どきのネット民にそのようなゴマカシは通用しないようだ。
ほんの少し前まで、昆虫食やコオロギ食を礼賛していた人々は、なぜか波が引くようにネット上から消えてしまった。あれがゴリ押しやステマの類でないとすれば、なんとも不可思議な現象だ。もし本物のブームだったなら、グラリス社も「設備投資に必要な国の補助金」を受けて事業を継続できただろうに後味の悪い結末となった。
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