日本はいかなる国であるべきか?誰も国是を知らない悲劇
では、どうしてトランプ氏の言動に一喜一憂しなくてはならないのかというと、積極的にこの国是を確認するチャンスがないことが一番の理由です。
誰かが、自分の意見を言うと、「アイウエオ」「カキクケコ」「サシスセソ」に偏ってしまう、それが現在の日本です。この3つは、どれも不安定だし、トランプ式の「一喝」を喰らったら一瞬で崩壊してしまうような、非現実性と脆弱性を抱えているのです。
そして、日米安保体制をどうするのか、とか、日米安保体制は不公平ではないか、というトランプの「素人の思いつき」は、そうした日本の政治風土がはらむ非現実性、脆弱性を露呈させてしまう力を持っています。
もちろん、問題を乗り越えるのは簡単ではありません。ですが、「保守」も「リベラル」も「ノンポリ」も同じように脆弱で、非現実的だということを確認しながら、とにかく日本の「他にありようのない国是」としての3原則に寄せていく、その努力が必要だと思うのです。
もう一度確認したいのですが、戦後秩序への忠誠、自由と民主と平和主義、先進国型社会の堅持、この3つです。これが日本の国是だと思います。保守も、リベラルも、ノンポリも、この国是から大きくブレています。にもかかわらず、原因不明の宿命的な幸運が作用して、この3つが均衡して全体が一種の合意を形成しています。
その平均値が偶然に、あるべき国是に近い点になっています。少なくとも3つ目の先進国社会の維持については、あるべき点からズレているためにどんどん後退していますが、少なくとも戦後秩序と理念については守れています。ですが、これは偶然なのです。だれも意思を強く持っていないし、結果論的にこうなっているだけです。
だから、トランプのような異常な介入、撹乱をされると日本は脆さを露呈してしまうのです。であるならば、いかにこの国是を意識するのか、強く支えるのか、これが問われてくるのだと思います。日米安保体制をどう考えるのかという最初の問いに戻るのであれば、この国是の確認というところから発想して議論してゆくしかないように思います。
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