トランプは“ケツを舐めにやってきた犬ポチ日本”に超ご機嫌。逆に“ケツを蹴り飛ばした中国”が準備する「4つの戦略」

 

「後ろ向きである上に短期的」な日本のトランプへの対応

(3)これら2国間外交の積み上げと並行して、中国はWTOへの提訴、国連安保理の非公式会合を開催して「関税を武器単独行動主義やいじめ行為を行い、世界経済や多国間の貿易体制に深刻な衝撃や混乱を引き起こしているトランプ政権を批判しよう」と提唱するなど、既存の多国間機構を活用して米国への圧力を強化しようとしている。5月には習近平がモスクワで開かれる「対ドイツ戦勝80周年記念式典」に出席、プーチン露大統領と対米戦略をすり合わせることになろう。

さらに7月にリオデジャネイロで開かれる「BRICS首脳会議」では、今年1月に正式加盟したインドネシアを含め中露印など10カ国が集う。この加盟に慎重だったインドネシアが踏み切ったのも、同国の重要産業であるニッケルの対米輸出を大幅に増やそうとする狙いがトランプ政権登場で断たれる見通しとなったことが大きな要因となっている。

同国のニッケル開発に多額の投資をしてきたのは中国で、ここでも米国は、幼稚な“関税遊戯”によって東南アジア最大人口の活力ある国をわざわざ中国の方に押しやってしまうという地政学的音痴ぶりを曝け出している。

このように、中国のトランプの馬鹿さ加減への対応は立体的かつ長期的で、日本のそれは平面的という以上に後ろ向きである上に短期的である。その根底にあるのは、米国の擬似覇権システムはまだ続いているのでその懐に潜り込もうと思う卑屈さなのか、それともそんなものはもう「はっきり言って、終わった」と捉えて自分なりの道を切り拓こうとする雄々しさなのか、という大局的な時代観の選択問題である。石破は果たしてその試練を超えられるのだろうか。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2025年4月21日号より一部抜粋・文中敬称略。ご興味をお持ちの方はご登録の上お楽しみください。初月無料です)

この記事の著者・高野孟さんのメルマガ

初月無料で読む

高野孟さんの最近の記事

【関連】トランプ関税は「最も深刻な自傷行為」と米国内から猛批判も。嫌気が差した東南アジアが中国・習近平の訪問を歓迎した理由
【関連】理想主義者でも現実主義者でもない。「負債を整理し不公平を改めるべき」と叫ぶトランプは“何主義者”なのか
【関連】トランプ関税が中国の人民を本気で怒らせ団結させる。米大統領の“オウンゴール”が習近平政権に吹かせた最大の追い風

初月無料購読ですぐ読める! 4月配信済みバックナンバー

※2025年4月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、4月分のメルマガがすべてすぐに届きます。

  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.699]トランプのケツを舐めに行く日本、そのケツを蹴り飛ばす中国(4/21)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.698]米アメリカン・エンタープライズ研究所が解明したトランプ関税の根拠数字のどうしようもない初歩的な代入ミス(4/14)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.697]ようやく明らかになったトランプの関税計算法のデタラメ(4/7)

いますぐ初月無料購読!

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込880円)。

2025年3月配信分
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.696]日本は国家としての自尊心を取り戻し、反トランプ関税の国際連帯の先頭に立つべきだ!(3/31)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.695]米中が戦争すれば中国のミサイルが米軍と自衛隊の基地に雨霰と降り注ぐという深刻な予測(3/24)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.694]政府・防衛庁の余りにお粗末な「先島住民避難計画」(3/17)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.693]トランプの「怒りと憎しみの政治」を超える思想はアジアから立ち現れるのか?(3/10)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.692]「怒りと憎しみ」に溺れていく米国の政治と社会ーーネットとAIがそれを加速させる(3/3)

2025年3月のバックナンバーを購入する

2025年2月配信分
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.691]輸出が「過去最高を更新」というニュースは本当か?(2/24)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.690]ウクライナ戦争を終わらせるペグセス提案は意外に核心を突いている(2/17)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.689]「太鼓持ち外交」に徹した石破首相の初訪米(2/10)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.688]丸山眞男バイアスを除去することで見えてくる「江戸思想」の逞しさと面白さ(2/3)

2025年2月のバックナンバーを購入する

2025年1月配信分
  • [高野孟のTHE JOURNAL:687]2025年は農政に一大転機が訪れる年(1/27)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.686]トランプ第2期政権の傷だらけのスタート(1/20)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:685]またまた露呈した軍事オタク首相の政治オンチぶり(1/13)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:号外]今週号は休刊します(1/6)

2025年1月のバックナンバーを購入する

image by: 赤沢りょうせい (あかざわりょうせい)/ryosei akazawa 【 official 】 - Home | Facebook

高野孟この著者の記事一覧

早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 高野孟のTHE JOURNAL 』

【著者】 高野孟 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 毎週月曜日

print
いま読まれてます

  • トランプは“ケツを舐めにやってきた犬ポチ日本”に超ご機嫌。逆に“ケツを蹴り飛ばした中国”が準備する「4つの戦略」
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け