我が国にトランプのケツを蹴っ飛ばす気概はないのか?“裸の王様”の妄動を諭すことなくケツを舐めにゆく下劣極まる石破政権

 

米ソのいがみ合いこそが現実的な世界と思いたがる戦争好きな人々

このような軍事紛争の徹底回避の考え方こそ、2度の世界大戦の悲惨を味わった後の戦後世界への基調報告であり、それと46年の日本国憲法第9条とは思想的に深々とリンクしている。ところが戦争好きの右寄り連中や米国の冷戦派は、国連憲章や日本国憲法の不戦論は空想的な世迷いごとであり、その数年後に始まった冷戦下での米ソ両極のいがみ合いこそが現実的な世界の姿であると思いたがる。

しかし冷戦下の米ソそれぞれの覇権主義、それを盟主と仰いだ東西の敵対的軍事同盟、仮想敵を定めた味方だけの結束とそのための集団的自衛権、侵略と報復の武力に頼った脅し合い等々は、すべて「熱戦」時代の戦争カルチャーそのままであって、こちらの方が過去の遺物にすぎない。

だから、冷戦が終わった時にブッシュ父が思うべきだったのは、「ああ、これからは多極世界を多国間のフラットな協議で運営していくという国連原理に立ち戻らなければならないのだな。国連原理の実現を阻害してきたのは冷戦論理だったのだ」ということであったはずだ。しかし彼はその真逆に、冷戦論理そのままに「邪魔なソ連がいなくなって米国が唯一超大国になった」という思い込みに走って、米国が冷戦後世界に適合していく道筋を塞いだのだった。

国連憲章と日本国憲法第9条の不戦思想こそ、日本国民も原爆や沖縄戦や本土空爆などで多大の血塗れの犠牲を出しながらその発出に貢献した、戦後世界へのメッセージである。

そのメッセージの発出者としての矜持を持って、米国の世界理解の一貫した誤りの連続とその戯画化された結末としてのトランプの妄動に対し「あなた、間違っていますよ」と諭すことが必要だというのに、石破政権がやっているのはトランプの汚いケツを舐めるような卑屈な行為である。戦後史の総括を賭けて、トランプのケツを蹴飛ばそうとする気概はこの国には残っていないのだろうか。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2025年5月12日号より一部抜粋・文中敬称略。ご興味をお持ちの方はご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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