【イスラエル総選挙が左右する中東の未来─国内政治が世界秩序を揺るがす時代へ─】
2026年10月27日に予定されるイスラエル総選挙は、一国の政権選択を超えた意味を持ちます。その結果は、ガザ、レバノン、イランへの対応のみならず、米国との戦略的関係、中東諸国との外交、さらには国際社会の安全保障環境全体に波及する可能性があります。
これまでの中東では、「外交が国内政治を左右する」場面が多くありました。しかし現在は逆に、「国内政治が外交を規定する」構造が鮮明になっています。今後数か月の中東情勢を見通す上で、軍事動向と同じくらいイスラエル国内の政治力学を注視する必要があります。
1.与野党逆転の兆し──ネタニヤフ首相の苦境
この一週間で最も注目すべき動きは、世論調査における地殻変動です。
7月8日・9日実施のマーリブ紙による世論調査によれば、ネタニヤフ首相率いる与党リクードの予想獲得議席は21議席にとどまり、アイゼンコット元参謀総長率いる中道政党「ヤシャル」の22議席を下回りました。
その後複数のテレビ局(チャンネル12、チャンネル13、Kan)が実施した調査でも、ヤシャルがリクードに並ぶか、あるいは上回る結果が続けて示されています。
首相としての適性を問う設問でも、アイゼンコット氏がネタニヤフ首相を10ポイント前後上回るなど、明確な差がついた調査もあります。
もっとも、野党陣営(ユダヤ系野党)だけでは過半数の61議席には届かず、アラブ系政党を加えて初めて過半数を超えるという構図は変わっていません。つまり、政権交代の可能性は高まっているものの、その道筋は依然として複雑です。
ネタニヤフ首相の不人気の背景には、2023年10月7日に発生したハマスによる襲撃──1,000人以上の犠牲者を出し、251人が人質に取られた事件──の責任を問う声が根強くあることに加え、戦争や安全保障を盾にした同首相の権力集中に対する左派からの懸念も影響しています。
なお、連立与党は7月17日にクネセト(国会)を解散し、10月16日から20日の間に総選挙を実施することで合意していますが、この決定はまだ、7月16日現在、本会議での正式な議決を経ていません。
2.国内政治が外交を動かす時代
従来、イスラエルの外交政策は、安全保障上の必要性から比較的一貫性を保ってきました。しかし現在では、連立政権の維持、与党内の力学、世論の変化、人質問題、司法改革を巡る対立など、国内政治の要因が外交判断に与える影響が大きくなっています。
支持率回復を狙って、ネタニヤフ首相はこれまでガザ、レバノン、イランへと戦線を拡げ、戦果を挙げることで求心力を維持しようとしてきました。総選挙を控え、一段と強硬姿勢を強めるとの懸念も根強くあります。「政治の魔術師」とも呼ばれ、幾多の政治的危機を乗り越えてきた同首相が、支持率低迷のなかでもなお続投するのではないかという見方も囁かれています。
また、直近ではイスラエルの情報機関モサドが、イランの体制転換を企図し、アハマディネジャド元大統領を担いで親イスラエル体制の樹立を図る工作を行っていたことが発覚し、頓挫するという出来事もありました。アハマディネジャド氏は現在、革命防衛隊によって自宅軟禁状態に置かれているとされています。
この一件は、イラン国内の反イスラエル感情を刺激しただけでなく、トランプ大統領を激怒させたとも伝えられており、米・イスラエル関係にも微妙な影を落としています。
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