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「ブルガリアの離脱」で露呈した欧州内における温度差

4.支援疲れと結束の狭間──ブルガリアの離脱

欧州各国はウクライナ支援を継続していますが、その温度差も次第に表面化しています。象徴的なのが、7月14日にラデフ首相が表明した、ウクライナ支援融資国連合からのブルガリアの離脱です。

ブルガリアは「外交交渉による解決こそ重要であり、ウクライナに戦争を継続させる支援はむしろ逆効果で、和平にはつながらない」との立場を示しており、すでに今年6月の時点でウクライナへの軍事支援を停止していました。

ブルガリアはEUとの連携自体は維持する方針のようですが、EUが検討しているロシアへの追加制裁──特に個人を対象とするもの──については拒否権を行使する構えを明言しています。全会一致を原則とするEUの意思決定システムの下では、この制裁は事実上見送られる公算が大きいといえるでしょう。

それでも現時点では、「欧州全体としてロシアの一方的な現状変更を容認しない」という基本姿勢は維持されています。個別政策では意見が分かれても、安全保障の基本原則については一定の結束が保たれていることが、欧州の特徴だといえます。

ウクライナ戦争が欧州にもたらした最大の変化は、「ロシアへの警戒」だけではありません。「安全保障は他国に委ねるものではなく、自ら構築するものだ」という認識が欧州全体に広がったことです。

その結果、防衛政策は軍事だけでなく、エネルギー、サイバー、宇宙、AI、半導体、サプライチェーンといった国家の総合力を競う政策へと変化しています。安全保障と産業政策の境界は急速に薄れつつあります。

今後の国際競争では、「どれだけ強い軍隊を持つか」よりも、「どれだけ持続可能な安全保障基盤を築けるか」が重要な評価軸となるでしょう。ただし、ブルガリアの離脱が示すように、この「結束」は決して一枚岩ではなく、経済的疲弊が進めば同様の動きが他の加盟国に広がる可能性も否定できません。

紛争は、戦場だけで終わるものではありません。長期化した紛争の後には、必ず「新しい秩序をどう設計するか」という課題が残ります。欧州がいま取り組んでいるのは、まさにその設計作業です。

防衛費を増やすこと自体が目的ではありません。本当の目的は、「抑止力を維持しながら、将来の戦争を起こさせない仕組み」を構築することにあります。

調停の現場でも同じです。一時的な合意は、危機を止めることはできます。しかし、長期的な安定をもたらすのは、当事者が共通の利益を持ち、それを支える制度と信頼が築かれて初めて可能となります。

ブルガリアの離脱は、「結束」と「合意疲れ」が紙一重であることを示す好例でもあります。欧州が目指すべきなのは、軍事的優位ではなく、持続可能な安全保障秩序であり、その成否は制度設計と政治的意思の双方にかかっています。

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