中間選挙での共和党の敗北を境に、早くも大きく変わり始めたトランプ政権の外交姿勢。国内政治での求心力が低下する一方で対外的な成果を必要とする米大統領の焦りは、国際社会にどのような波紋を広げるのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦が読み解く国際情勢の裏側戦略インテリジェンス・レポート』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、米国とイランの駆け引きを中心に、中間選挙後の国際交渉の場で生じた力関係の変化を分析。さらにイスラエルの政権形成をめぐる動向も取り上げつつ、各国の思惑が今後の中東情勢に及ぼす影響を考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:売り急ぐ大統領と、待つ相手-米中間選挙の審判、急ぐ外交、そして機械の速さ
売り急ぐ大統領と、待つ相手-米中間選挙の審判、急ぐ外交、そして機械の速さ
米中間選挙をはさんだこの数日の間に、トランプ大統領は英フィナンシャル・タイムズ紙の取材に、こう語っています。
「我々は欲しいものをすべて手にしつつあるようだ」
投票日の前夜にあたる11月2日の夜、米軍はホルムズ海峡に浮かぶイランのケシュム島の防空施設を攻撃し、大統領自身はそれを「小さな攻撃で、戦争ではない」と説明していました。そして翌日の11月3日、米国の有権者は、大統領の与党に歴史的とも言える審判を下しました。上院も下院も、民主党の手に渡ったのです。
投票の翌日、大統領は、イランとの戦争が共和党の敗因だったのかと記者に問われ、ガソリンの値段を挙げて「おおむねその通りだ」と認めています。戦争の請求書は、給油所の看板という最も身近な場所で、有権者の手元に届いていました。選挙の翌日、大統領は、イランへの攻撃の再開について「準備はできている。だが、その必要はないかもしれない」と言葉を和らげました。
前日には、イスラエルへの年間40億ドルの支援を年内で打ち切ると明かし、その前日には、米国とロシアとウクライナの三者協議を11月10日からアブダビで開くと特使が発表しています。
選挙の前と後で、ワシントンDCの言葉の温度が、目に見えて変わりました。前号で私は、世界の時計が「選挙の後」に合わせて止まっているとお伝えしました。その時計は、今週、一斉に動き出しました。
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ただし、動き出したのは米国の時計であって、相手の時計ではありません。
「売り急ぐ売り手ほど、買い叩かれる」
不動産の取引でも、紛争の調停でも、この原則が崩れるのを私は見たことがありません。
今号では、中間選挙が書き換えた交渉の力関係、イランとの「撃たない理由」と「撃つ理由」、イスラエルの手切れの宣言と組閣の算術、アブダビへの道、空から降ってくる戦争と人間の躊躇のジレンマ、そして和平の後の和平と和平なき撤収を、順に読み解いていきます。
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