「長年の慣習は恐ろしい」―。そう記すのは、無料メルマガ『ビジネス発想源』の著者・弘中勝さん。自販機業界で長年信じられてきたある常識が実は誤りだったというエピソードを引きながら、考え続けることの大切さを説いています。
考え続けなくなる怖さ
最近読んだ本の内容のからの話。
自動販売機業界では30年以上の長きにわたって、「自販機の一等地は『左上』である」という「常識」が信じられていた。自販機の前に立ったお客は、最初に「左上」を見て、アルファベットの「Z」の形を描くようにして右下まで視線を動かすと考えられていたのである。
ダイドードリンコの自販機は、東北や北関東、静岡や山梨では販売シェアは高いが、都市部ではコカ・コーラやサントリーなどのライバルに比べて弱かった。「どうすれば買いやすい自販機にできるのか?」という定性調査や定量調査を行なっても、インタビュー形式の聞き取りやアンケートでは、お客自身が気づかない無意識の行動まで分からない。
そこでダイドーは、スウェーデンのトビー・テクノロジー社が開発した人間の視線を追いかけることができるアイトラッキング(眼球追跡)の装置を使って分析したところ、その結果に誰もが驚いた。
自販機の一等地は、「左上」ではなかったのだ。