安すぎて生産者が悲鳴。それでも値上げできない「もやし」の悲劇

 

こういった経緯があり、協会がもやし生産者の窮状を訴えたわけですが、ネットを中心に様々な意見が飛び交いました。「50~60円ぐらいでもいい」「多少の値上げは仕方がない」といった値上げを容認する意見が多く見られました。こうした声を受けて、もやしを適正価格で販売するように改めたスーパーもあったようです。

ただそれでも、もやしの安売りが完全になくなったわけではありません。例えば、愛知県内のスーパー2社が5月にもやしなどの野菜数品目をいずれも1円で販売し、独占禁止法に定める不当廉売に該当する恐れがあるとして公正取引委員会から警告を受けています。2社は価格の安さを競う形でもやしなどの価格を下げ、最終的に1円で販売するようになったのです。独禁法はこういった過度な安売り行為を禁じています。

こういった例もあり、もやしが適正価格で販売され続けていくかは予断を許さない状況です。

総務省の家計調査によると、協会が窮状を訴えた3月のもやしの価格は100グラム15円70銭で9月は15円65銭でしたが、その間は特筆できるような数値の推移が確認できないため、窮状の訴えが店頭価格にどの程度影響を与えたかはなんとも言えない状況です。

また、主要市場である東京都中央卸売市場の同期間の平均価格は100グラムあたり11円50銭~60銭で推移しほとんど変わりがありません。窮状の訴えが卸売価格に影響を与えていないと考えることもできそうです。

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窮状を訴えることで消費者や小売業者に現状を理解してもらおうとした例は他にもあります。鶏卵生産者の団体が13年に「卵の未来を、助けてください」という見出しの意見広告を新聞に掲載し、生産者の厳しい実情を訴えています。卵の卸売価格は昭和20年代よりも安く、採算割れで廃業に追い込まれている生産者が少なくないといいます。新聞に意見広告を出して理解を求めた形です。

最近では豆腐製造業者が卸売価格の低下で苦境に立たされています。豆腐製造業者の要望により農林水産省が適正取引を推進する指針を3月に策定し、小売業者に是正を求めています。小売業者が不当に安い仕入れ価格を要求するような悪習が一部で残っているためです。豆腐も卵やもやしのように特売の対象になりやすく、卸売価格を高く設定できないといいます。豆腐製造業者もまた、廃業に追い込まれるケースが少なくありません

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