中国投資銀、オバマの弱腰が招いたパクスアメリカーナの終わり

Lisa S./Shutterstock.com
 

時あたかも中国・海南島で開かれた国際金融フォーラムで中国政府系投資ファンド「中国投資」の丁学東会長は「世界の投資を巡るルール作りは歴史的に先進国主導で行われてきたが、新興国が主体的に関与すべきだ」と語ったが、その通りで、20世紀的な米欧日中心のシステムとルールが21世紀的な中国主導のシステムとルールに置き換えられようとしているのであり、それに乗りかかって行くことに「失敗」した米日は、今さら他国の動向を見て参加する訳にはいかず、せいぜい世銀・ア開銀がAIIBと敵対するものではないと位置づけ直して、AIIBと協調して仕事を進めていきたいと表明する以外に道が残されていない。

こんなことになるのは、台頭する中国をどう扱うかについて、米国の腰が定まっていないからである。一方では、中国、インドをはじめユーラシアの巨大市場が欲しい多国籍企業などビジネス界や民主党リベラル派などの対中国融和論があり、他方では中国の軍事的台頭を危険視する共和党タカ派や軍産複合体などの対中国対決論があって、オバマ大統領は基本的に前者の立場だが、後者に足を引っ張られて曖昧化せざるを得ない。

TPPが、アジア・太平洋の包括的な自由貿易圏を目指すのであれば、最初から中国を参加させなければ意味がないことは、誰が考えても分かることだが、オバマはそうせずに、先に米国主導で新しい貿易ルールを強引に作ってしまって、もし中国が入りたいなら膝を屈して従えと言わんばかりの経済的“中国包囲網”を敷こうとした。ところが彼は他方では、習近平主席との親密な関係を重視し、米国のアジア回帰が決して軍事的な“中国包囲網”を意図するものでないことを繰り返し表明していて、戦略的整合性を欠いている。

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