石油の世紀の終わり。アメリカの次の「支配者」はどこになるのか?

 

米国の現状

シェールガスは2000年前半に米テキサス州で開発が成功し生産が本格化した。近年はオイルにもその技術が活用されて生産が伸びている。そして、2015年には、米国はサウジを抑えて世界最大の原油産出国になった。

しかし、生産する原油のコストは、サウジが自噴の石油井戸であり、10ドル以下もあるが、平均では20ドル以下である。これに比べてシェールオイルはコストが高い。テキサス州のイーグル・フォードで30ドル~40ドル、ノースダコタ州のバッケンで35ドル~45ドルで、平均は60ドル程度である。ということは、現時点の29ドルでは、全井戸が採算割れになっている。いつまで生産している企業が耐えられるかという状態である。

そして、原油井戸の投げ売りを大手石油会社は待っている。開発しなくて良いので生産コストが低くなるし、10年というスパーンで見ると石油は供給不足になると見ているからである。

また、米国の外交政策では、シェールオイルでほぼ自給できるので中東からの石油に依存しなくて済み、混乱続く中東には米国は関与しなくてよいことになっている。これが中東の混乱の原因でもある。

しかし、ハイイールド債のシェール関連企業の社債組み入れ率は30%であるが、シェール企業の倒産が多発してデフォルトになり、ハイイールド債のファンドも解散している。ジャンク債市場が干上がっている。

逆に、石油が安いので、米国では大型の自動車が売れ始めている。しかし、日本や欧州では低燃費な自動車が売れている。それは石油にかかる税金が高いからである。

米国の衰退へ

パリで開かれたCOP21では、地球温度上昇を1.5℃にしようと二酸化炭素の排出を減らすことが決まった。

中東の産油国UAE=アラブ首長国連邦では、太陽光や風力など再生可能エネルギーの普及について話し合う国際会議が始まりまった。UAEの首都アブダビで16日、世界140か国以上が加盟し、再生可能エネルギーの世界的な普及を目指すIRENA=国際再生可能エネルギー機関の総会が行われた。世界的な再生可能エネルギーヘのシフトが起きることになる。

石油から再生可能エネルギーへの転換で世界は次の経済成長が起きるという専門家もいるが、石油の世紀は終わりが始まったようである。

21世紀のエネルギーは何になるかの競争も起きている。自動車では、空気中の二酸化炭素と水でメタンを作り、それでディーゼル車を駆動するというドイツ、電気で駆動するという米国テスラ、水素で駆動するという日本トヨタとホンダの戦いである。過渡的にハイブリット車というのが日本メーカの考え方である。

米国はIT技術を生み出した国であり、その発展に寄与してきた。次はウェアラブル端末であり、人工知能であるとしてベンチャーが割拠しているが、そのユニコーン企業の投資成績が非常に悪い状態である。人工知能はIBMが取り組んでいるので良いポジションであるが、大型計算機が売れずに、IBM自体は苦戦している。

日本は、繊維に落ち込んだセンサを開発して、ウェアラブルではなくインビジブル化した服を提案している。IT端末は中国企業が米企業を仰臥してきたし、アップルのiPhoneは、とうとう売れなくなってきたようである。

自動車産業では新しいエネルギーに積極的ではなく、ITでの新しい提案がなくなってきた。

石油が20世紀を繁栄に導き、その先頭を米国は走り、米国の覇権を確立したが、石油から再生可能エネルギーになったとき、米国はその覇権を失うことになりそうである。

その過渡期に今あると見えるのであるが、どうであろうか?

サウジがOPECで生産制限をしなかったのも、再生可能エネルギーが今後、普及してくると見えているので、石油の価格を下げて、再生可能エネルギーの台頭を遅らせようとしてるようにも感じる。

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