政権に萎縮するNHKと、「停波」恫喝に盾つけないTV界の惨状

 

奥野が「停波」に言及したのには具体的な理由がある。自民党情報通信戦略調査会が昨年4月17日、報道番組の内容についてNHKとテレビ朝日の幹部を呼びつけて事情聴取したさい、同調査会の川崎二郎会長が「放送法ではテレビ局に対して停波の権限もある」と記者団に語ったことだ。呼びつけること自体、番組制作への不当な介入だが、そのうえに「停波の恫喝までおこなったのである。

まともな政治家なら、「停波」などと軽々しく口にできるものではない。もし「停波」で放送ができない間に、大災害など緊急事態が起きたら、どう責任をとるというのだろうか。まして、総務省が思慮分別のない自民党議員の発言に同調することなど、以前だと考えられなかった。奥野は「高市ならひょっとして」と思ったのだろう。

岸井のケースが当てはまるかどうかは別として、奥野に対する高市の答弁は「停波」の可能性を否定するものではなかった。

「民主党政権時代から放送法4条は倫理規定ではなく法規範だと答弁している。放送事業者が極端なことをして、改善を要請しても繰り返されるという場合に、何の対応もしないとは、お約束できない。違反した場合には罰則規定があり、将来に渡ってそれがあり得ないと言うことはできない

奥野は毎日新聞の取材にこうコメントしている。

「役人なら、ああいう答弁は書きません。放送法違反で停波することはないか、という私の質問には『仮定の質問にはお答えできません』と答えるのが普通。しかし高市さんは紙を見ることなく自分の言葉で答弁していた」

高市は公開質問状への回答と同じように、あえて持論を通したということだろう。放送法とか電波法とかいうと小難しいが、要するに政権側からテレビ局への脅しである。その立ち回りに一役買ったのが、意見広告を出した右派知識人たちであり、広告の資金は安倍晋三、高市早苗ともに関係の深い極右団体「日本会議」から出ているといわれている。

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