歴史マニアに突っ込まれても「真田丸」が史実通りに描かれない理由

 

横山光輝の全60巻の大作『三国志』で、主要人物の1人である豪傑の張飛(ちょうひ)には右目や左の頬に大きな傷があります。これは、作者の横山光輝が、中国の張飛の史料をいろいろと眺めてみた結果、どれもおなじ虎髭の張飛像ばかりだったけれども、「前線で飛び出る武将に傷がないわけがない」と解釈して、自分の解釈でつけたものなんだそうです。

確実にその影響を受けている最たるもの、本宮ひろ志の描いた三国志漫画天地を喰らう』で、この作品の張飛も、片目が傷でつぶれています。この『天地を喰らう』という漫画は1989年にカプコンによってアーケードゲームとなりましたが、このかつてのゲーム基板が、今は中古品としてタイやベトナムなどの東南アジア各国の下町のゲームセンターにやたら出回っています。

今は東南アジアでも、同人誌を描くようなクリエイターの卵がどんどん育っていっていますが、彼らたちの描く三国志の題材の中には、顔に傷の入った張飛を描いているものもあり、「ゲーセンのゲームではそうだったから」というイメージを持っていたりします。つまり、今まで描かれてきた虎髭の張飛とはまた違う新しいイメージの張飛がうまれたわけです。

これも、横山光輝先生が最初に傷を入れたのは、「張飛には普通、顔に傷はない」ことよりも「張飛の顔に傷はなかった、という史実はない」ということほうを前提にしているからです。

「判明していない部分は取り入れない」ということではなく、「判明していない部分は好きなように膨らませる」ということが脚色をする際には大事で、それが新しいものを生む発想のひとつと言えるでしょう。

判明していることのみを使うのではなく、判明していないことを想像できる力が、クリエイターには求められているのです。

【今日の発想源実践】(実践期限:1日間)

  • 自社の業界の中で「判明していないこと」「分かっていないこと」にはどのようなことがあるか。思い出せるものを全て、ノートに列挙する。
  • それに対して、自分なりの仮説と、「でも実際の事実はこうだったら面白いかも」という別の仮説を考える。

image by: Shutterstock

 

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