宮川音頭
1
町も野山も花ざかり
京の都に春が来た
花の都に春が来 た
花は宮川 花は宮川
ヨーイ ヨーイ ヨイ京おどり
2
鴨も千鳥がささやいた
あなた恋しとささやいた
仇(あだ)な目元に春の風
恋は宮川 恋は宮川
ヨーイ ヨーイ ヨイ京おどり
3
ふりも拍子も艶やかに
舞の都に春が来た
扇もつ手に春がきた
花は宮川 花は宮川
ヨーイ ヨーイ ヨイ京おどり
4
明けりゃ河原は花がすみ
夕べ見た夢恋の夢
むねにたたんだ二人連れ
花は宮川 花は宮川
ヨーイ ヨーイ ヨイ京おどり
5
国へみやげは都紅
納豆八つ橋みすや針
すぐきしばづけ五色豆
みやげばなしは みやげばなしは
ヨーイ ヨーイ ヨイ京おどり
このように「宮川音頭」は5番まであるのですが、最後の5番だけは芸舞妓さん全員が歌いながら舞います。途中から舞の動きが曲が転調したあとに早くなるのですが色とりどりの艶やかな着物が動く姿がひときわキレイなのです。色とりどりの西陣織の帯や京友禅の着物の中に織り込まれている金糸銀糸が照明に照らされて輝いて見えます。
前列で並んで舞う舞妓さんの振袖とだらりの帯が隣り同士でバタバタと音を立ててぶつかるのが前の席だと聞こえてきます。か弱い少女が数十キロの重さの衣装を身にまとい一生懸命舞う姿。その姿は厳しい稽古を積んできた努力の証を感じる年に一度の光景でもあります。
そして舞のスピードの変化もさることながら、5番の歌詞がとても心に響くものとなっています。ご覧頂いた通り4番までは宮川町やすぐ近くを流れる鴨川など京都の景色や花街の様子を歌っています。でも5番は京おどりを観た観客へ向けて歌っている詩になっています。
都紅はかつては京都でしか売っていなかったぐらい貴重な口紅です。納豆は大徳寺納豆で納豆を乾燥させた京都の特産品です。八つ橋は江戸時代の琴の名士・八橋検校(けんぎょう)の墓所・金戒光明寺の門前菓子屋が琴の形をとって作った有名なお菓子です。みすや針は御所内で御簾(みす)の内側で秘密裏に作るようにとまで言われた精巧な針です。今でも三条河原町にある老舗針店「みすや」の針です。昔は服は女性が夜なべして作るものでそれには良質な針が欠かせない時代でそれがあったのは織物が発達した京都だったそうです。すぐきは上賀茂で栽培されるカブの一種でしばづけ、千枚漬けと合わせて京都の三大漬物のひとつです。五色豆はまさに色とりどりのお豆さんで夷(えびす)川にある老舗豆政の由緒ある御菓子です。
短い歌詞の中で京都には高級品から美味しい物まで沢山のお土産があることをこれでもかというぐらい紹介しています。でも歌の最後にそれにも増して地元に帰ったら是非身内の人達に聞かせてあげて欲しいと強調しているもの。みやげばなしは、みやげばなしは「京おどり」だと強調しているのです。目の前で観ないとその感動は伝わらないので無理がありますが、その想いも込めて一生懸命に舞う彼女達の姿がとても感動的なのです。