世界最大のゲーム見本市に「不参加」表明のメーカーが続出する理由

 

お金がかかりすぎ

まずはお金がかかりすぎること。数千万円???いえいえ、E3である程度のブースを持つには数億円~数十億円のお金が3日間で吹っ飛びます。場所(コマ)代、内装設置費、コンパニオン代、ケータリングなどなどを含みますが、これに伴って会場外でプレスイベントをする場合はさらに追加、社員や関係者の移動費、宿泊費などを含めるとものすごい金額が出ていく期間なのです。

ロサンゼルス市が市をあげて誘致するにもわけがあるんです。この期間中ホテル、交通機関をはじめ商談や会食など経済効果は5,000万ドル約55億円)とか、派生するいろいろなことを考えるとそれ以上かもしれませんね。

出展するメーカーさんにとっては1年に一度ものすごくお金がかかる見本市なんです。よく欧米のパブリッシャーさんと話すと「E3一回でそこそこのゲームが1本作れちゃうよね」ってことが話題になりますが、この金額を使ったプロモーション効果測定は各社行っているはずです。不参加のメーカーはその効果測定の結果の判断をしたのでしょう。

 小売向け&メディア向け見本市

毎年夏にドイツで行われるGamescom(GC) や 東京ゲームショウ(TGS)など、業界関係者のみならずエンドユーザー向けの要素も含んでいるショーと違って、E3は業界の小売りやメディアなど業界関係者のみに向けて行われています。各メーカーがその年の年末商戦に向けてどういうゲームを開発しているかお披露目をするという目的がメインでした。パッケージ販売が主たるビジネス方式だったころから行われているE3ですから、プレイヤブルをROMで持ち込んで(ぎりぎりまで磨いて笑)初プレイさせる場所だったわけです。

ところが世はインターネット時代。プレイヤブルもROMで持ち込まなくてよい時代です。会場まで見に来ていただかなくてもYoutubeでメーカー自らがプレイ動画を上げることも簡単にできる時代になりました。実は10年位前から小売りにはE3前にプレイヤブルを渡していることも多く、実際はショーイベントでどう派手に見せるかだけが主眼になっていると言われていました。

また、パッケージビジネスからダウンロードビジネスへ移行しつつある北米のゲーム業界では「小売に向けてよりもエンドユーザーに向けて」のほうが重要で、業界関係者しか入場できないE3よりもコンシューマーに向けたプライベートショーのほうが有益であるということがいえましょう。ま、実はココが一番のポイントで、世の流れはエンドユーザーへ直接届ける時代ということでしょうね。実は北米のメーカーはかなり前からE3のほかに、各社が独自のプライベートショーやキャラバンを行ってエンドユーザー向けにお披露目の機会を作ってきています。

前述しましたが、ヨーロッパのGC、日本のTGSとならび、北米ではPAXが大きな対抗馬と言える状況です。小売、メディアと同時にエンドユーザーに直接アピールできるショーであるからです。

実際にPAX(Penny Arcade Expo)は年々大きなコンシューマショーになってきています。皆さんも最近よく耳にされると思います。2004年からシアトル(厳密にはワシントン州ベルビュー市)で始まった初回のPAXは3,000人程度を集客する中規模のショーでしたが、2011年には70,000人を集めるまでに育ちました。PAX Prime(シアトル)とPAX East(ボストン)の2回を同年開催し、2015年にはその2つに加えてテキサス州サンアントニオ市で行われるPAX Southも加え、1年に3回も行われる大きなショーになり、多くのハードメーカーからソフトメーカーまでブースを構えるようになりましたね。PAXに関しては今後掘り下げて書いていこうと思っています。

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