松下幸之助&本田宗一郎に学ぶ、「怒る」と「叱る」の違い

 

本田宗一郎さんの「叱る」

本田宗一郎さんは感情の豊富な直情の人です。

こと技術のことになると、気に入らないとハンマーが飛んでくるのは日常茶飯事のことであったらしい。“人命にかかわることであること”に関し、また“最高の技術”に関しては落ち度があると、瞬間的に烈火のごとく「叱り」はじめます。

しかし、もともと陽性の人で人一倍気づかいの人だから、一晩たったらすぐに「ちょっと、怒りすぎたかなあ」と反省すると、本人の本のなかに書かかれています。翌日は、なんとなく照れもあり、謝らないけれどそれとなく冗談をいったりして場を取り繕ったようです。

本田さん自身も、「私の気持ちはなんとなく分かってもらえていたのではないかなあ」ともらされています。社員の人も、その照れと気遣いが感じられたとも述べられています。

本田さんは「叱る」ときの効果は考えていません。ただ「叱る」ことには一貫性があります。松下さんについても同じことが言えます。

「叱り」のフォロー上手

二人とも根底にある考えの本質は同じであるものの、そこにはやはり少し違った味わいがあります。とはいうものの「叱る」のフォロー上手です。

松下さんは、「松下電器は電気器具をつくる会社である。しかし併せて人をつくる会社である」と明言しています。松下さんの思いは「いかに人創るか」につきます。「叱責」の場で、社員に「君に叱責するのはこれからもがんばってほしいから行うのだが、君が納得していないのなら行わない」と言ったともいわれています。

また、大叱責をしたその日に叱責した社員の奥さんに、「今日は、ご主人に叱責したから落ち込んでいると思うが、会社にとって大事な人だからそうしたので、今晩はおいしいご馳走でもつくって」と言って気遣ったという話もあります。

本田さんは心配りの達人です。中古の工場を手に入れたとき、真っ先にやったのがその時分はめずらしかった「水洗トイレ」の設置です。社員に対する気遣いは人一倍で、自分を茶化すことも多かった人です。本田さんは「人好きな心」を持っていたようです。

NHKの知恵泉で出ていたエピソードで、なにかのことで大叱責をした後で海外へ出張し、ふとその社員が体調が悪そうであったことを思い出し、わざわざ「電報」を送って気遣った。本田さんは純粋で直情な面もあったようですが、それ故に人一倍細やかな心使いのできる人だったようです。

「叱る」という行為に「私心」がなく誰もが納得し、その後「私心」なく気遣いを受けたとき、「この人に、何があってもついて行こう」という想いが生まれるのだと思います。二人の中に共通するのは「公」と「私」との違いを知っているということです。

>>次ページ 私心なく「叱れる」ことが大切

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