「日本人が働けば働くほど国が滅びに向かう」というパラドックス

 

長時間労働で経済は成長しない

1990年代はじめ、フランスの女性首相クレッソンさんは、「日本人はアリのように働く」と発言しました。当時日本は世界一豊かな国で、心に余裕があった。クレッソンさんの発言について、逆に「フランスは働かないキリギリスだから経済が発展しないのだよ」と笑うこともできた。

ところが日本はその後、「暗黒の20年」に突入。20年間GDPがまったく増えないという異常事態になった。この20年、日本人は働かなかったのでしょうか? いえ、みんな一所懸命働いています。しかし、1990年前とここ20年の違いは、「昔はアリのように働けば確実に豊かになったが、今はアリのように働いても豊かにならない」ということなのです。(もちろん「全体」の話で、実際には働けば働くほど豊かになる人もたくさんいます)。

ちなみに一人当たりGDP世界一はルクセンブルグです。2015年、10万2,000ドル。(1ドル100円換算で1,020万円!)。同年日本は世界26位で3万2,485ドル(1ドル100円換算で、324万円)。つまり、ルクセンブルグは、日本より3倍以上豊かである。

では、ルクセンブルグ人は、日本人の3倍仕事をしているのでしょうか? OECDのデータによるとルクセンブルグ人の平均年間労働時間は2012年、1,509時間。日本は同年、1,745時間でした。つまりルクセンブルグ人は、日本人より年間236時間も短く働き、3倍の収入を得ている! 236時間を法定労働時間8時間で割ると29日になります。ルクセンブルグ人は日本人より1か月短く働いて平均年収は3倍! 「経済成長のためには、もっともっと働かなければならない」というのは、完全に「幻想」であることがわかるでしょう。

ITmedia ビジネスオンライン10月18日付に、英エコノミスト紙からの引用がありました。

「(日本の)超過労働は経済にあまり恩恵をもたらしていない。なぜなら、要領の悪い労働文化と、進まないテクノロジー利用のおかげもあって、日本は富裕国からなるOECD(経済協力開発機構)諸国の中でも、最も生産性の悪い経済のひとつであり、日本が1時間で生み出すGDPはたったの39ドルで、米国は62ドルである。つまり、労働者が燃え尽きたり、時に過労死するのは、悲劇であるのと同時に無意味なのだ」

長時間労働は、「悲劇であるのと同時に無意味」だそうです。残念ながら、これが現実。日本経済が26年も停滞しているのには、それなりの理由があるのですね。

print
いま読まれてます

  • 「日本人が働けば働くほど国が滅びに向かう」というパラドックス
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け