「2016年はVR元年」に異議あり! 第一次ブームは27年前に起きていた

2016.11.08
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by まぐまぐ編集部
 

もちろん、ここで書きたいのは今のVRが単なるくり返しということではない。今のブームを支える歴史をある程度おさえておく必要があるということである。たとえばHMDひとつとっても、実はSONYのHMDも2回目である。SONYが最初にHMDを売り出したのは1996年のことで商品名は「Glasstron」である。

コンピュータの能力も格段の進歩をとげた。大体10年間で100倍くらいと言われている。第1世代と第2世代の間には25年の差があるわけだから、グラフィクス能力は、数万~数10万倍ということになるだろう。かつての映画クラスのCGが、現在のVRでは利用可能である。第1世代の画像は直方体や三角錘などの組み合わせで表現されたごつごつしたものでしかなく、よほどの創造力のある人でなければ現在のVR画像を思い浮かべることはできなかったに違いない。

周辺的な技術環境が整備されてきたということもブームを後押ししている。技術の進化でよく言われることは、いろいろな変化が同時多発的に起きなければ、折角の良い商品も生き残っていかないということである。たとえば、自動車という技術が広まるためには、ガソリンスタンドの整備が必須である。

HMDだけ立派なものができても、見回す映像がなければどうしようもないだろう。一つの答えは全天周(360°)カメラである。全天周カメラも昔は自作するしかなかったが、今では数万円で入手可能、しかも自撮り棒にとりつけられるぐらいのコンパクトさである。

今ならば、ネットワーク環境から画像を手に入れればよいではないかという人もいるだろう。ところが、1989年にはWEBという概念や、いわんやモバイルインターネットなどは存在していなかったのである。第1世代VRはインターネットネイティブではなかったのである。

そして、何よりも大きな違いは、VRのようなデジタルメディアに対する人々の理解や満足水準が格段に異なってきたという点である。この感覚は世代によってちがう。ある程度若い世代にとっては、映像はインタラクティブであたりまえである。

信じられないことかも知れないが、先に述べたSONYのGlasstronにはヘッドトラッキング機能がついていなかった。商品としての「売り」は、「全天周」ではなく、眼前におかれた「大画面スクリーン」ということだったのである。飛行機をつくりながら、「飛べる」ことをアピールしなかったようなものである。

右を見れば右に視界が広まるという体験のおもしろさは、研究開発者を中心とする、ごく限られた人にしか理解されていなかった時代、そして、ヘッドトラッキング技術がきわめて特殊かつ高価だった時代の話である。

image by:  J.J Grimaud(VPL社)

 

著者/廣瀬通孝

東京大学大学院情報理工学系研究科 教授。

昭和57年3月、東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。工学博士。同年東京大学工学部講師、助教授、先端科学技術研究センター教授などを経て、平成18年東京大学大学院情報理工学系研究科教授、現在に至る。

日本バーチャルリアリティ学会会長、監事などを務める。

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