日本よりアメリカだ。プーチンが見せた露骨な「心変わり」

 

ロシアは、北方領土問題を、1秒も話したくない

日本で「ロシア」といえば、まず「北方領土問題」です。しかし、ロシア側は、「戦争に勝ってロシア領になった」という認識。

私たち日本人は、「ソ連は日ソ中立条約を破りやがって!」と憤っている。ロシアは、「ヤルタ協定で米英に頼まれて参戦した。アメリカとイギリスも合意しているので問題ない」という立場。

ポツダム宣言受諾決定後にソ連軍が北方4島を攻めて奪った件については、完全スルー。そして、その「史観」は、戦後70年間「ソ連は大祖国戦争に偉大な勝利をした!」と教育され、固定化されてきた。

アメリカは、「原爆は必要悪であった」と強弁します。同じように、戦勝国というのは、戦時中のすべての行為を「善」とする。つまり、ロシア側は、北方領土にからむさまざまな問題について、「ロシアが悪いとは1ミリも考えていない

私たちは、「日ソ中立条約を破ったこと、ポツダム宣言受諾決定後に北方4島を占領したこと」など、「明白な悪」と認識し、「ロシアもそう思っているだろう」と信じている。

まずこの認識が違います。ロシア側は、「悪いことをした」とは、まったく思っていません。これだけ聞いて、ロシアが嫌いになる人も多いことでしょう。しかし、「戦勝国というのはそういうものです。既述のように、アメリカは、「原爆投下=必要悪」、あるいは「善」だったと信じている。こういう認識なのに、日本政府の人たちは、ロシア政府高官に会うたび、「いつ島を返してくれますか?」と毎回毎回言う。「戦争に勝ってロシアのものになった」という完全認識なのに、「返してくれ!」と言われても、ロシア政府の人は訳がわからない。そういうことなのです。

強調しておきますが、これ、「私」(北野)の考えではありません。「ロシア側がそう思っている」という話です。ですからこの認識の件で、私にクレームしないでください。クレームは、クレムリンなどにお願いします。

ロシアが欲しいのは経済協力

それで、日ロ関係は停滞していました。安倍さんが総理になられた後は、かなり好転していましたが。2014年3月のクリミア併合以降、日本は対ロ経済制裁に参加し、停滞していた。それでも、安倍さんとプーチンの強い意欲で、両国関係は改善してきた。

ロシア側に「北方4島を返す気が全くない」のなら、なぜロシア政府は交渉に応じるのでしょうか? これは「経済協力が欲しいからです。ロシアは、クリミア併合後、「制裁」「ルーブル安」「原油安」の「三重苦」に苦しんでいる。だから日本との経済協力を進めることで、厳しい現状を打破したい。

一方、日本は正直経済協力をしたくない。まず、原油・ガスが安いので、ロシア資源の必要性をあまり感じていない。それに、ロシアと経済協力を進めると、アメリカの動きが怖い

つまり日本とロシアの間には、「大きな溝」がある。

  • 日本=ただ4島を返して欲しい。経済協力したくない。
  • ロシア=経済協力が必要。4島返したくない。
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