コンセプトがあって初めて理念を実践できる
まず大分類の戦略のひとつとして、「かかりつけ薬局」である、というコンセプトを掲げている。
お客様一人ひとりの笑顔を、という理念において、丁寧に、カスタマイズしたサービスを提供するのだ、というコンセプトを「かかりつけ」という言葉で表現している。
会長の杉浦光一氏は、
「医者にかかる前に、身近にあるドラッグストアで、気軽に健康相談や検診を受けてほしい」
「医者へ行ったら、門前薬局ではなく、自宅や職場から近い“かかりつけ薬局”に処方箋を持って行き、薬の重複や飲み残しを減らしてほしい」
と、東洋経済オンラインでのインタビューで答えている。
その背景には、
「当時の薬屋は、他社よりも安くして儲けようというのが一般的で、かかりつけ薬局という考え方はなかった」
ということがあったとも振り返っている。
今でも、自宅の近所には開業医のお医者さんがいて、私と家族にとってはなくてはならない主治医さん、いわば“かかりつけのお医者さん”である。
ちょっと熱が出た、インフルエンザの予防注射などで相談にいき、手術や入院が必要だと、大病院に紹介状を書いてくれるのは、かかりつけのお医者さんである。
ということは、同じように、「かかりつけの薬屋さん」があってもいい、というのが、スギ薬局のコンセプトなのである。
ホームページの上部のロゴの横に、
「もっと近くに、ずっと頼りに。あなたの笑顔のチカラになる」
とある。
かかりつけ、というコンセプトを、この一文に明文化して、社員に、そしてホームページへの訪問者、そして顧客に、メッセージとして発信している。これは名刺の裏にも書かれているとのことだ。
私の地元・名古屋にも、各所にスギ薬局とスギドラッグがある。
私のオフィスの近くの地下鉄の駅にも、大きな交差点を挟み、スギ薬局とスギドラッグがある。地下鉄の主要な駅の多くに、このどちらの業態でも出しているのも特徴的である。
店内に入ってみて共通するのは、元気があり明るい店内だ、ということ。
「いらっしゃいませ」という一声も、商品の陳列棚にある説明用の、手書きのPOPにも、勢いがあるのだ。これが居心地の良い店舗にしている。
この点は名古屋ビジネスの特徴でもある。
地元、地域を大事にする名古屋人は、一見、「一見さんお断り」的な雰囲気を醸し出すが、その実は、一度懇意になった方を大事にする。
「入口は狭いが、奥行きが広い」のが、名古屋ビジネスの特徴なのだ。
もう1点の共通点は、品揃えにある。
コスメやドラッグ類に加えて、食品や菓子類も共通して売られているが、「調剤薬局」が店舗内にある。
2000年の上場当時は、調剤の売り上げが200億円ほどで、アナリストからも「儲からない」と言われていたそうだ。(前述の日経MJのインタビューより)
しかし、健康志向の高まりや医薬分業の政府方針により、それこそ、調剤薬局が生活者にとって身近になってきている。
その中で、一般薬局またはドラッグストアの店舗内に、調剤薬局があるという利便性は、顧客には価値がある。
17年前の視点には、先見性があったのであろう。
このほかにも、愛知県のみでなく東京などでも、健康増進フェアを開催している。
いわゆる店頭で顧客が実際に何かをする「体験型イベント」だが、これも地域密着で、社員が来店客と接する良い機会になる。