先見の明あり。なぜ「スギ薬局」は業績右肩上がりを続けられるのか?

2017.01.17
by yomeronpou
 

コンセプトがあって初めて理念を実践できる

まず大分類の戦略のひとつとして、「かかりつけ薬局」である、というコンセプトを掲げている。

お客様一人ひとりの笑顔を、という理念において、丁寧にカスタマイズしたサービスを提供するのだ、というコンセプトを「かかりつけ」という言葉で表現している。

会長の杉浦光一氏は、

「医者にかかる前に、身近にあるドラッグストアで、気軽に健康相談や検診を受けてほしい」

「医者へ行ったら、門前薬局ではなく、自宅や職場から近い“かかりつけ薬局”に処方箋を持って行き、薬の重複や飲み残しを減らしてほしい」

と、東洋経済オンラインでのインタビューで答えている。

その背景には、

「当時の薬屋は、他社よりも安くして儲けようというのが一般的で、かかりつけ薬局という考え方はなかった」

ということがあったとも振り返っている。

今でも、自宅の近所には開業医のお医者さんがいて、私と家族にとってはなくてはならない主治医さん、いわば“かかりつけのお医者さん”である。

ちょっと熱が出た、インフルエンザの予防注射などで相談にいき、手術や入院が必要だと、大病院に紹介状を書いてくれるのは、かかりつけのお医者さんである。

ということは、同じように、「かかりつけの薬屋さんがあってもいい、というのが、スギ薬局のコンセプトなのである。

ホームページの上部のロゴの横に、

もっと近くにずっと頼りにあなたの笑顔のチカラになる

とある。

かかりつけ、というコンセプトを、この一文に明文化して、社員に、そしてホームページへの訪問者、そして顧客に、メッセージとして発信している。これは名刺の裏にも書かれているとのことだ。

私の地元・名古屋にも、各所にスギ薬局とスギドラッグがある。

私のオフィスの近くの地下鉄の駅にも、大きな交差点を挟み、スギ薬局とスギドラッグがある。地下鉄の主要な駅の多くに、このどちらの業態でも出しているのも特徴的である。

店内に入ってみて共通するのは、元気があり明るい店内だ、ということ。

「いらっしゃいませ」という一声も、商品の陳列棚にある説明用の、手書きのPOPにも、勢いがあるのだ。これが居心地の良い店舗にしている。

この点は名古屋ビジネスの特徴でもある。

地元、地域を大事にする名古屋人は、一見、「一見さんお断り」的な雰囲気を醸し出すが、その実は、一度懇意になった方を大事にする

入口は狭いが奥行きが広い」のが、名古屋ビジネスの特徴なのだ。

もう1点の共通点は、品揃えにある。

コスメやドラッグ類に加えて、食品や菓子類も共通して売られているが、「調剤薬局」が店舗内にある。

2000年の上場当時は、調剤の売り上げが200億円ほどで、アナリストからも「儲からない」と言われていたそうだ。(前述の日経MJのインタビューより)

しかし、健康志向の高まりや医薬分業の政府方針により、それこそ、調剤薬局が生活者にとって身近になってきている。

その中で、一般薬局またはドラッグストアの店舗内に調剤薬局があるという利便性は顧客には価値がある
17年前の視点には、先見性があったのであろう。

このほかにも、愛知県のみでなく東京などでも、健康増進フェアを開催している。

いわゆる店頭で顧客が実際に何かをする「体験型イベント」だが、これも地域密着で、社員が来店客と接する良い機会になる。

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